ニュースリリース

Watsonxのご紹介: ビジネスのためのAIの未来

2023年05月16日

【米国ニューヨーク州アーモンク-2023年5月9日(現地時間)発】

著者:カリーム・ユセフ(Kareem Yusuf)博士、IBMソフトウェア、プロダクト・マネジメント&グロース担当シニア・バイス・プレジデント

 

今AI(artificial intelligence)は、革命的な瞬間にあります。この10年、機械学習(ML: machine learning)やディープ・ラーニング(deep learning)の技術によって目覚ましく進歩してきたAIは、急に飛躍的な進歩をしたように見えます。突然、誰もが生成AIについて語るようになり、時には興奮し、時には不安になっています。しかし、私たちが目にしている進歩が重要であること、そして、迅速かつ戦略的に行動する企業にとって大きなチャンスであることを疑う人はほとんどいません。

 

しかし、なぜ今なのでしょうか?それは、生成AIが最近進化してきた基盤モデルを活用しているからです。新しいユースケースごとに、特定のデータを使って新しいモデルを設計・構築する必要がある従来のMLとは異なり、基盤モデルは大量のラベルなしデータで学習でき、新しいシナリオやビジネス・アプリケーションに適応させることができます。このように、基盤モデルは、AIの大規模なスケーラビリティーを可能にすると同時に、追加のモデルを微調整するためのデータ要件がはるかに低いため、使用するたびにモデル構築の初期作業をなくすことができます。その結果、ROIの向上と投入までの時間を大幅に短縮することができます。

 

IBMは何十年もの間、世界初のチェッカーというボードゲームのプログラミングからクラウドでのAI向けスーパーコンピューターの構築まで、AIにおける画期的な技術開発の最前線に立ち続けています。IBMは、企業向けAIソリューションの包括的なポートフォリオを持っています。IBM Watsonは、20の業界にわたって1億人以上のユーザーに展開され、IBM Researchの専門チームは、最先端の技術を推進し続けています。

 

AIはすでにビジネスに成果をもたらしています。サプライチェーンを強化し、重要な企業データをサイバー攻撃から守り、さまざまな業界で毎日何百万人もの顧客にシームレスな体験を提供するのに役立っています。しかし、生成AIを支える基盤モデルをもっと身近なものにすれば、これまでの成果をまるで前座のように思わせるものになりえます。IBMでは、データサイエンティストから開発者、コーディングをしたことのない一般ユーザーまで、あらゆる種類の「AIビルダー」によるAI構築を可能にする時が来たと信じています。

 

IBMの次世代AIプラットフォームであるwatsonxは、まさにそれを実現するために設計しています。watsonxは高品質で信頼できるデータへのアクセスを提供し、新しい生成型基盤モデルと従来の機械学習システムの両方を構築・改良できる単一のプラットフォームで、ユーザーが共同で作業できるようにします。私たちが確認した初期のユースケースは、デジタルレイバーから、IT自動化、アプリケーションのモダナイズ、セキュリティー、サステナビリティーまで多岐にわたります。

 

watsonxは、watsonx.aiwatsonx.datawatsonx.governanceの3つの製品群で構成されています。watsonxは、ユーザーに高度な機械学習、データ管理生成AIの機能を提供し、ビジネス全体のAIシステムの学習、検証、調整、導入を、スピードと信頼できるデータ、そしてガバナンスで実現します。データの準備からモデルの開発、展開、モニタリングに至るまで、データとAIのライフサイクル全体を促進することができます。そして、あらゆる企業において、最先端のAIのもたらす機会を拡大し、加速させる可能性を持っていると考えています。

 

watsonx.aiで全社的にAIを学習、検証、調整、展開する

 

watsonx.aiは、今とこれからのビジネスのために設計されたAIスタジオ(ツール・機能群)です。データサイエンティスト、開発者、アナリストが機械学習に基づくAIを構築、実行、展開できるようにするIBM Watson Studioの機能と、基盤モデルを活用する最新の生成AIの機能を兼ね備えています。

 

watsonxの核となるのは、信頼という原則です。AIが普及するにつれ、企業は、顧客と対話する際にモデルが、もっともらしいウソをついたり、不適切な言葉を使ったりせず、信頼できるものである必要があります。私たちのアプローチは、更新される法律や規制の状況に俊敏に適応するために、適切なレベルの厳格さ、プロセス、テクノロジー、ツールを確立することです。watsonx.aiは、企業向けの高品質で事前学習ずみのIBM独自の基盤モデルをユーザーに提供します。これらのモデルは、特定の領域に特化し、データの取得、実証性、品質に厳格に注力して構築しています。さらに、IBMは、watsonx.aiを通じて、幅広いオープンソース・モデルを利用できるようにしています。

 

信頼の次に重要なのは、アクセスです。AIが真に変革をもたらすためには、できるだけ多くの人がそのメリットを享受できるようにする必要があります。そのために、IBMはユーザーの使いやすさを念頭に置いてwatsonx.aiを設計しました。watsonx.aiは、データサイエンティストや開発者のためだけのものではなく、ビジネス・ユーザーも、さまざまなタスクに自然言語で応答する使いやすいインターフェースでアクセスすることができます。

 

Prompt Labでは、文章の要約やドキュメントの感情分析など、さまざまなタスクのプロンプトを入力して、ユーザーがモデルを試すことができます。タスクに応じて、watsonx.aiはドロップダウン・メニューから基盤モデルを選択できるようにします。開発者は、API、SDK、ライブラリーを使用して、当社のModelOps環境で直接ワークフローを構築し、機械学習モデルを開発から展開まで管理することができます。上級者は、Tuning Studioを使用してラベル付きデータでモデルをカスタマイズし、事前に学習済みのモデルから新しい、より信頼できるモデルを作成することができるようになります。

 

基盤モデルに関してIBMは、言語は始まりに過ぎないと考えています。IBMは、コード、時系列データ、表形式データ、地理空間データ、ITイベント・データなど、さまざまなタイプのビジネス・データで学習したモデルも構築しています。一部のお客様にベータ版として提供する最初の基盤モデルには、言語(LLM: Large Language Model)、地理空間データ、分子、コードに対する基盤モデルが含まれます。

 

watsonx.dataで AIを拡張・管理

AIがビジネス全体において真にインパクトのある結果をもたらすためには、既存のワークフローやシステムに統合し、顧客サービス、サプライチェーン、サイバーセキュリティーなどの分野における主要なプロセスを自動化する必要があります。企業は、クラウドだけでなく、最新のソフトウェアやハードウェア、既存のシステムなど、さまざまな場所にAIワークロードを簡単かつ安全に移動させることができる必要があります。

 

watsonx.dataにより企業は、データへの迅速な接続、信頼できるインサイトの獲得、データウェアハウスのコスト削減が可能になります。オープン・レイクハウス・アーキテクチャーで構築したデータ・ストアは、オンプレミス環境とマルチクラウド環境の両方で動作します。

 

あらゆるデータ、アナリティクス、AIのワークロードに最適化したwatsonx.dataは、データレイクの柔軟性とデータウェアハウスのパフォーマンスを兼ね備え、データが存在するあらゆる場所でデータ分析とAIを拡張するビジネスを支援します。ワークロードの最適化により、組織はこのソリューションを活用することで、データウェアハウスのコストを最大50%削減することができます[1]

 

ユーザーは、クラウドとオンプレミスの間で共有するメタデータ・レイヤーにより、単一のエントリー・ポイントからデータにアクセスすることができます。watsonx.dataには、ガバナンス、セキュリティー、自動化が組み込まれており、データサイエンティストや開発者は、管理されたエンタープライズ・データを使用して基盤モデルの学習や調整(チューニング)を行うことができ、またデータのエコシステム全体で企業のコンプライアンスやセキュリティーにも対応します。

 

watsonx.dataにより企業は、IBMやサードパーティーのサービスとの相互運用性を最大限に活用し、マルチクラウド・アーキテクチャーで信頼性の高いAIモデルの構築やAIライフサイクルの自動化を実現することができるようになります。

 

watsonx.governanceでAIのライフサイクルに信頼を構築

AIモデルにおいては、構築・調整中も、製品やワークフローに組み込まれた後も、信頼が最も重要です。

AIが日々のワークフローに組み込まれれば組み込まれるほど、ビジネス全体で責任ある倫理的な意思決定を推進するための能動的なガバナンスが必要になります。

watsonx.governanceは、AIツールやAIの使用に関する必要な防御策の構築を支援することができます。これは、ポリシーの作成、決定権の割り当て、リスクと投資の決定に対する組織のアカウンタビリティーを確保するための、データとモデルのライフサイクルを自動化するソリューションです。

 

watsonx.governance は、ソフトウェアの自動化を採用しているため、たとえサードパーティーのツールを使用して開発されたモデルであっても、データサイエンス・プラットフォームの切り替えに過度のコストをかけることなく、お客様のリスクを軽減し、規制要件を満たし、倫理的懸念に対処する能力を強化します。これにより、データ・セット、モデル、関連メタデータ、データ処理経路の出所を文書化しながら、複数のツール、アプリケーション、プラットフォームを自動化、統合することができます。

 

watsonx.governance は、顧客のプライバシーを保護し、モデルのバイアス(偏り)やドリフト(精度の低下)を事前に検出する機能を提供することで、企業が倫理基準を満たし、リスクと評判を管理できるようにします。また、カスタマイズ可能なレポートとダッシュボードは、関係者の可視性と協業を維持するのに役立ちます。

 

今すぐIBMと、AIをビジネスにご活用ください

IBMは、中核となるAIと自動化の製品やコンサルティングなど、主要なソフトウェア・ソリューションおよびサービスにwatsonx.aiの基盤モデルを組み込んでいきます。以下はその一例です:

  • Watson AssistantWatson Orchestrate: デジタルレイバーの中核製品をNLP基盤モデルで強化し、従業員の生産性と顧客サービス体験の向上を支援します。
  • Watson Code Assistant:生成AIを活用し、開発者が "Deploy Web Application Stack" や "Install Nodejs dependencies" などの簡単なコマンドで、コードを自動生成できるようにします。
  • Watson AIOps Insights: コードと言語処理の基盤モデルで強化されたAIオペレーション(AIOps)機能により、IT環境全体のパフォーマンス・データと依存関係の可視性を高め、IT運用(ITOps)マネージャーとサイト・リライアビリティー・エンジニア(SRE)がより迅速かつコスト効率の高い方法で障害を解決できるようにします。
  • Environmental Intelligence Suite (EIS):今年からas-a-Serviceで提供されるIBM EIS Builder Editionは、地理空間基盤モデルを搭載し、企業が独自の目標やニーズに基づき、環境リスクに対処し低減するための、カスタマイズされたソリューション構築を可能にします。

 

信頼をAI戦略の中核に

これらの新しいAIモデルは人々のテクノロジーとの関わり方に大きな影響を与え、ビジネスの進め方だけでなく、ビジネスについての考え方も根本的に変えることで、私たちが想像し始めたばかりの可能性を、やがて当たり前のものにしていくでしょう。

 

しかし、その可能性を十分に発揮するためには、AIは信頼と透明性の基盤の上に構築されなければならず、誰もがメリットを享受できるように、できるだけ広く利用できるようにしなければなりません。IBMは、信頼できるAIの5つの柱である説明可能性、公平性、堅牢性、透明性、プライバシーが重要だと信じています。

 

IBMは、このような信頼の基本原則を守りながら、可能な限りアクセスしやすいようにwatsonxを設計しました。信頼できるAIが生産性を向上させ、イノベーションを推進する未来は、可能であるだけでなく、すでに到来しているのです。今はエキサイティングな時代です。AIを活用し、ともに世界をより良くしていきましょう。

 

以上

本日同時に公表した、以下のBlogもぜひご参照ください:

 

当報道資料は、2023年5月9日(現地時間)にIBM Corporationが発表したブログの抄訳です。原文はこちらをご参照ください。

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