ニュースリリース
IBM、地理空間AIを進化させ、気候問題に取り組む
- IBMとNASA、気象と気候のための新たなAI基盤モデルを構築へ
[米国ニューヨーク州ヨークタウンハイツ-2023年11月30日(現地時間)]
IBMは本日、NASAと共同で開発したIBMの地理空間基盤モデルを含む地理空間AI技術を、アラブ首長国連邦(UAE)におけるヒートアイランド現象の分析、ケニア全土の森林再生、イギリスの気候回復力などの気候変動対策に応用する新たな取り組みを発表しました。
IBMは、地理空間アプリケーションを含む自然言語以外のドメイン用に設計された基盤モデル(異なるタスクに使用でき、ある状況から別の状況へと情報を適用できるモデル)の作成、トレーニング、ファイン・チューニング(微調整)、オープンソース化を通じて、AIモデル戦略を進めています。
これらの衛星画像などの地理空間情報に基づいて学習したモデルは、気候変動に対処するための独自の機能を提供します。これは、特殊なタスク用に調整された従来のAIモデルとは異なり、衛星データや気象データを含む地理空間基盤モデルは、ペタバイトやエクサバイトの気候関連データから知識を獲得して、環境に関する洞察や解決策の迅速かつ合理的な発見を促進することができるためです。また、これらのモデルは、浸水の検出や火災の跡など、気候変動を引き起こしたり明らかにしたりする多くの分野の問題に対して、モデルのファイン・チューニングを行うことで、適用することができます。
IBMフェロー 兼 IBMアクセラレーテッド・ディスカバリー部門バイス・プレジデントのアレッサンドロ・クリオーニ(Alessandro Curioni)は次のように述べています。「気候変動は現実的かつ差し迫った問題であり、私たちは、今日の最先端のAI技術を含め、可能な限り迅速かつ効率的に対処する新たな方法を見つけなければなりません。地理空間データを活用したAI基盤モデルは、かつてない方法とスピードで、地球の健康に影響を及ぼす多くの気候関連事象をより良く理解し、準備し、対処するためのゲーム・チェンジャーとなり得ます。これらのテクノロジーが、未来の世代のために、より安全で健康な地球を実現するための解決策を導き出し、適用するのを加速させるのに役立つことを期待しています」
アラブ首長国連邦における都市のヒートアイランド現象の分析
GHG排出量が高水準で続けば、今世紀末までに多くの都市が破壊的で過剰な熱波に見舞われる可能性が高いです。都市に住み続けるための持続可能で公平な計画を策定するためには、熱レベルの上昇を正確に把握し、対処する必要があります。
IBMとモハメッド・ビン・ザイード人工知能大学(MBZUAI)は、都市のヒートアイランド現象(周辺地域と比べて気温が著しく高い地域)のマッピングに基盤モデルを適用する先駆的な試みを行っています。この研究は、アブダビの都市環境と、アラブ首長国連邦の基本的な環境がヒートアイランド現象の発生にどのような影響を与えるかを理解するためにIBMの地理空間基盤モデルのファイン・チューニング版を適用しています。
このモデルは、現在までに、この地域のヒートアイランド現象を3℃(5.4F)[1]以上削減する取り組みの成功に貢献しています。今後もこのモデルは継続的に、気候が変化する中で都市の熱ストレスを軽減するための都市設計戦略の開発に役立つ洞察を提供することが期待されます。
ケニアにおける森林再生と水の持続可能性の促進
2022年12月、ケニアのウィリアム・ルト大統領は、2032年までにケニア全土に150億本の木を植えることを目的とした「全国育樹・森林再生キャンペーン」を発表しました。ケニアでは給水塔が水資源の約4分の3を占めていますが、森林伐採により地域の水不足が進んでいます。
IBMとケニア政府のアリ・モハメド気候変動特使は、新しい「給水塔アダプト(adopt-a-water-tower)」イニシアチブを通じて、全国育樹・森林再生キャンペーンを支援するための覚書(MoU)に署名しました。この取り組みは、IBMの地理空間基盤モデルを活用した新しいデジタル・プラットフォームによって推進していきます。ユーザーは、特定の給水塔エリアにおける植樹・育樹活動を追跡し、可視化することができます。また、現地の開発者は、IBMの地理空間モデルと独自の現地情報を組み合わせたファイン・チューニングされたモデルを作成し、森林の再生を監視したり、吸収された炭素などの地上部のバイオマス度を測定したりすることができます。
イギリス全土で気候変動への回復力を高める
2021年、IBMと科学技術施設会議(STFC)のハートリー・センターは、英国全体の気候リスクと回復力に対処するため、IBMのAIを含む次世代技術の応用の探求に向けて協業しました。
現在、IBM、STFC、および世界的なコンサルティング・エンジニアリング企業であるRoyal HaskoningDHV社は、IBMの地理空間AIツールを活用し、組織の気候リスク評価プロセスを自動化・拡張する新サービスを確立するために協業しています。同サービスの最初のユースケースでは、航空分野に焦点を当て、IBMの地理空間AIが、以下を含む気象関連の問題を評価します。
- 異常気象が航空業務に及ぼす短期的影響
- 気候変動が将来の空港運営とインフラに及ぼす長期的影響
さらに、IBMとSTFCハートリー・センターは、Hartree National Centre for Digital Innovationを通じて、Dark Matter LabsとLucidmindsと共に、TreesAIプロジェクトの一環として、新しい研究分野を推進しています。この研究プロジェクトでは、IBMの地理空間AI技術をグリーン・アーバン・シナリオ(GUS)モデルに適用し、地表の洪水リスクを軽減するために植樹が可能な都市部の場所をマッピングします。この取り組みは、最終的にはイギリス全土の都市計画家、プロジェクト・デベロッパー、グリーン都市への投資家のための、エンドツーエンドのデジタル・プランニング・プラットフォームに反映されます。
生成AIを気象に応用するためのNASAとの協業の拡大
IBMとNASAは、地理空間基盤モデルの構築とデプロイという当初のコミットメントに加え、気象と気候のための新たなAI基盤モデルへの取り組みも発表しました。このモデルは 、IBMのAI技術を応用することで、天気予報やその他の気候アプリケーションの精度とスピードの向上、費用の改善を目指しています。サンプル・アプリケーションには、予測だけでなく、超解像ダウンスケーリング、山火事を発生させる条件の特定、気象現象の予測なども含まれます。IBMの研究者は、NASAの専門家とともに、モデルの学習と検証を行います。
COP28におけるIBMの役割について
これらの最新の取り組みとCOP28におけるIBMの役割は、IBMの環境に関する行動、研究、アドボカシーの長い歴史に基づいています。IBMは50年以上前の1971年に最初の環境方針を発表し、2007年には気候変動に関する公式見解を発表しました。IBMはまた、国連環境計画の「環境に関する科学・政策・ビジネス・フォーラム」や「気候リーダーシップ評議会」の創設メンバーでもあり、IBMサステナビリティー・アクセラレーターなどのイニシアチブを通じて、気候変動やその他の環境問題を抱えるコミュニティーを支援しています。
当報道資料は、2023年11月30日(現地時間)にIBM Corporationが発表したプレスリリースの抄訳をもとにしています。原文はこちらを参照ください。
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