ニュースリリース

短期海外研修プログラムにおける学びに関するAPUと日本IBMの共同論文が、異文化コミュニケーション学会(SIETAR Japan)発刊のジャーナルに掲載

APUの短期海外研修プログラム「FIRST」における学びのプロセスを、AI技術を活用して分析・可視化
2023年11月 9日

旅と学びの協議会

立命館アジア太平洋大学

日本アイ・ビー・エム株式会社

 

旅と学びの協議会(事務局:ANAホールディングス株式会社)会員である、立命館アジア太平洋大学(所在地:大分県別府市、学長:出口治明、以下APU)と日本アイ・ビー・エム株式会社(本社:東京都中央区、代表:山口明夫、以下日本IBM)は、本日、短期海外研修プログラムにおける学びに関する共同論文「プロジェクト型の大規模短期海外研修プログラムにおける学びの可視化―グループにおける相互作用の特徴語「任せる」(他者依存)を中心に―」を執筆し、異文化コミュニケーション学会(SIETAR Japan)発刊の研究ジャーナルである「異文化コミュニケーション」第26号に掲載されたことを発表しました。

 

本研究は、旅と学びの科学的な検証に挑戦する「旅と学びの協議会」の取り組みの一環として、短期海外研修プログラムにおけるグループでの学びを明らかにするために、APUと日本IBMで取り組んできました。従来は、数名から数十名を対象とする小さなサンプルサイズにおける、個人の学びに着目した研究が主でしたが、本研究では、大規模なプロジェクト型の短期海外研修プログラムである「FIRST*1」を対象に、200以上の振り返りレポートを分析し、グループの学びのプロセスを可視化しました。また、経験学習理論*2とAUM理論*3にもとづく教育的仕掛けと学びの関連性を議論することで、短期海外研修プログラムにおける効果的な教育設計を提案しました。分析にはIBMのAIであり、複合的な検索・テキスト分析のプラットフォームであるIBM Watson Discoveryを活用しています。今後、短期の研修プログラムであっても、異文化環境における能動的な態度やグループへの関わり方といった有意義な学びを、集中的かつ意図的に生み出すプログラムの開発と実践の発展が期待されます。

 

旅と学びの協議会は、今後も企業や大学の垣根を超えて、「旅に関するデータの科学的検証」を推進していきます。

 

*1:FIRST

FIRST(Freshman Intercultural Relations Study Trip)は、APUの初年次生向けのプログラムで、学期ごとの休暇を利用して国内外に赴き、そこで初めて出会う人々との交流や調査活動を通して、アジアの文化・社会に直接触れることが出来る短期集中プログラム。

URL:https://www.apu.ac.jp/abroad/program/?pgid=1&version=&version=

 

*2:経験学習理論

経験による学びを、「具体的な経験」「内省的観察」「抽象的概念化」「能動的実験」という4つの要素に基づくサイクルとして提唱した理論。

 

*3:AUM理論

不安・不確実性調整理論(Anxiety/Uncertainty Management Theory)。不安が高すぎると相手の行動を予測できずコミュニケーションをとることを恐れ、低すぎると相手に関心を持たなくなるため、文化的適応にはある程度の不安と不確実性が必要であるとされる。

 

本研究の内容について

近年の高等教育では、多くの短期海外プログラムが開発される中、学習成果の複雑さや教育効果の検証の難しさが指摘されている。また、集団派遣が多いにもかかわらす、異文化におけるグループの相互作用に着目した成果研究が欠如しており、検証も小規模が中心である。

 

本研究では、APUの大規模海外研修プログラム「FIRST」を取り上げ、派遣中のグループの相互作用による学びのプロセスを可視化した。「FIRST」では、一度に100人以上の1回生が韓国に派遣され、くじで決まった目的地を目指し、グループごとに移動しながらアンケート調査を行う。この研究では、2015年および2016年に実施された「FIRST」(訪問先:韓国)に参加した238人の帰国後の振り返りレポートをテキストマイニングの手法で分析し、グループにおける相互作用を示唆する特徴語を抽出・整理した。その結果、「グループにおける相互作用」を示唆する特徴語の中で、「任せる」(他者依存)の出現頻度がもっとも高く、現地での「韓国語のコミュニケーションを(他のグループメンバーに)任せる」という文脈で最も使われていることがわかった。この「任せる」に関連する学びのプロセスを、プログラムの基盤となる経験学習理論に沿って追跡した結果、異文化対応を他者に依存する姿勢や主体性の意義への気づきといった意識変化が示唆された。最後に、経験学習理論とAUM理論にもとづく「FIRST」の教育的仕掛けの効果と学びの関連性を議論し、集団派遣の短期海外研修における効果的な教育設計について提案した。

 

論文名:

「プロジェクト型の大規模短期海外研修プログラムにおける学びの可視化―グループにおける相互作用の特徴語「任せる」(他者依存)を中心に―」

 

共著者:
日本アイ・ビー・エム株式会社 上甲 昌郎

日本アイ・ビー・エム デジタルサービス株式会社 北越 康敬

立命館アジア太平洋大学 教育開発・学修支援センター 准教授 筒井 久美子

立命館アジア太平洋大学 教育開発・学修支援センター 教授 カッティング美紀

立命館アジア太平洋大学 言語教育センター 准教授 JUNG Jonghee

 

旅と学びの協議会について

「旅と学びの協議会」は、ANAHDが、立命館アジア太平洋大学(APU)学長 出口治明氏、理事 東京学芸大学大学院准教授、スタディサプリ教育AI研究所所長 小宮山利恵子氏、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授 前野隆司氏、駒沢女子大学観光文化学類教授 鮫島卓氏をコアメンバーとした有識者とともに、教育工学・幸福学・観光学の視点から、旅の効用を科学的に検証し、次世代教育の一環として旅の活用を提言することを目的に2020年6月に設立した任意団体です。

URL:https://ana-conference.com/

 

立命館アジア太平洋大学(APU)について

立命館アジア太平洋大学(APU)は、2000年4月に大分県別府市に開学した「若者の国連」と呼ばれる日本初の多国籍な大学です。世界106ヵ国・地域(2023年5月1日時点)出身の外国人留学生が学生の半数を占め、『THE日本大学ランキング2023』では、「総合評価」全国私大4位、「国際性」全国1位、「教育充実度」全国3位の評価を受けています。異文化理解やグローバル教育に重点を置いた教育を提供しており、英語と日本語の両方での学習を求める独自のカリキュラムを採用しています。海外プログラムの評価も高く、2022年11月に、JAOS留学アワードを受賞しています。2023年4月には「第2の開学」として既存2学部(アジア太平洋学部、国際経営学部)の教学改革とともに新学部「サステイナビリティ観光学部」を開設しました。

URL:https://www.apu.ac.jp/home/

 

日本IBMについて

日本アイ・ビー・エム株式会社は、世界175カ国以上でビジネスを展開するIBMコーポレーションの日本法人で、基礎研究をはじめ、ビジネス・コンサルティングから、ITシステムの構築、保守まで一貫したサービスの提供を通じて、お客様の企業変革やデジタル・トランスフォーメーションを支援しています。詳細については、https://www.ibm.com/jp-ja/ をご参照ください。

 

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