ニュースリリース
IBMとNASA、AIを活用した気候変動の影響に関する研究で協業開始
[米国ニューヨーク州アーモンク-2023年2月1日(現地時間)]
IBMとNASAのマーシャル宇宙飛行センターは本日、NASAが有する地球および地理空間の膨大なデータから、IBMのAI技術を使用して新たな洞察の発見を目指す協業を発表しました。今回の共同研究では、AIファウンデーション・モデル(基盤モデル)技術を、NASAの地球観測衛星データに初めて適用します。
ファウンデーション・モデルは、ラベルの付いていない幅広いデータで学習できるAIモデルの一種で、さまざまな異なるタスクに使用でき、ある状況に関する情報を別の状況で利用することができます。これらのモデルは、過去5年間で自然言語処理(NLP)の分野を急速に進化させてきました。IBMは、言語分野を超えて、ファウンデーション・モデルの適用事例を開拓しています。
科学者による地球の研究および監視を可能にする地球観測データは、かつてないほどの速度と量で収集されています。これらの膨大なデータ資源から知識を抽出するためには、新しく革新的なアプローチが必要です。この研究の目標は、研究者が大規模なデータ・セットを分析し、そこから洞察を導き出すことを、より容易にすることです。IBMのファウンデーション・モデル技術は、地球に関する科学的理解と気候変動問題への課題解決をより迅速に進めるための、データの発見と分析を加速させる可能性があります。
IBMとNASAは、地球観測データからの洞察を抽出するため、いくつかの新しいテクノロジーを開発する予定です。あるプロジェクトでは、地球周回衛星によって取り込まれた土地被覆と土地利用の変化の記録データが含まれている、NASAのHarmonized Landsat Sentinel-2(HLS)データ・セットに基づき、IBMの地理空間情報ファウンデーション・モデルを学習します。そしてペタバイト級の衛星データを分析し、自然災害や周期的な作物の収穫量、野生生物の生息地といった現象の地理的な広がりの変化を識別することで,このファウンデーション・モデル技術は、研究者が地球の環境システムを分析するために重要な役割を担います。
本協業のもう一つの成果として、簡単に検索できる地球科学文献や資料などの構築が期待されています。IBMは、文献を整理し、新しい知識の発見を容易にするため、30万件近くの地球科学雑誌の記事で学習された自然言語処理モデルを開発しました。これまで、Red HatのOpenShiftソフトウェアで学習された最大のAIワークロードの1つを含む、完全に学習済みのモデルは、IBMのオープン・ソースの多言語質問応答システムであるPrimeQAで使用されます。地球科学の新しい言語モデルは、研究者にリソースを提供するだけでなく、NASAの科学データ管理とスチュワードシップのプロセスに組み込むことができます。
米国アラバマ州ハンツビルにあるNASAのマーシャル宇宙飛行センターのシニア・リサーチ・サイエンティストであるラフル・ラマチャンドラン氏(Rahul Ramachandran)は次のように述べています。「ファウンデーション・モデルの素晴らしいところは、多くのダウンストリーム・アプリケーションに使用できる可能性が見込める点です。このようなファウンデーション・モデルの構築は、小規模なチームでは実行できません。異なる見識、リソース、スキルセットを持つさまざまな組織から成るチームが必要です」
IBMのラグー・ガンティ(Raghu Ganti)主任研究員は、次のように述べています。「ファウンデーション・モデルは、自然言語処理での実績が証明されています。これらを今後、ビジネスや社会にとって重要な新しい領域やモダリティーに拡大していく必要があります。 地球科学データ内の地理空間、事象系列、時系列、およびその他の非言語現象にファウンデーション・モデルを適用することで、研究者、企業、および市民のより幅広いグループが、非常に貴重な洞察や情報を速やかに利用できるようになります。最終的には、より多くの人々が喫緊の気候問題に取り組めるようになるかもしれません」
IBMとNASAの今後の共同プロジェクトの可能性として、MERRA2(大気観測のデータ・セット)を使用した気象および気候予測のファウンデーション・モデルの構築があります。この協業は、今後10年にわたり、包括的で透明性の高い、協調的なオープン・サイエンス・コミュニティーを構築することを約束する、NASAのオープンソース・サイエンス・イニシアチブの一環として行われます。
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※参考情報
Think Blog Japan「基盤モデルとは?」
Smarter Business「IBMのファウンデーション・モデルへの取り組みと業務での活用」
当報道資料は、2023年2月1日(現地時間)にIBM Corporationが発表したプレスリリースの抄訳の一部をもとにしています。原文はこちらを参照ください。
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