ニュースリリース

IBMが次世代IBM POWER10プロセッサーを公開

ハイブリッドクラウド向け、Red Hatソフトウェアに最適化された新たなプロセッサー
2020年08月18日

2020年8月18日

[米国ニューヨーク州アーモンク – 2020年8月17日(現地時間)発]

IBMは本日、次世代のIBM POWERプロセッサーとなるIBM POWER10を公開しました。IBM POWER10は、企業のハイブリッドクラウドに特有のニーズに対応するプラットフォームをご提供します。IBM POWER10プロセッサーは、7nmフォームファクターを採用し、処理能力と効率性の向上に重点を置いて設計され、IBM POWER9プロセッサーと比較して、エネルギー効率やワークロード・キャパシティー、コンテナ密度を最大で3倍に高めることが期待されています。

IBM POWER10プロセッサーは、5年以上にわたって数百もの新規および申請中の特許技術を採用して設計され、IBM POWERプロセッサー・ロードマップに重要な進化をもたらします。IBM POWER10プロセッサー搭載システムは、2021年下半期に提供を開始する予定です。この新しいプロセッサーの技術革新には、以下のものが含まれます。

  • IBM初の商用7nmプロセッサー

IBM POWER9と同じパワーエンベロープでありながら、プロセッサーのエネルギー効率とキャパシティーを最大で3倍へと高め、処理能力がさらに向上しました。1

  • マルチペタバイト級のメモリー・クラスターに対応

画期的な新技術であるMemory Inceptionにより、マルチペタバイト級のメモリー・クラスターが利用可能になります。これによって、SAPやSAS InstituteなどのISVや大規模なAIモデルの推論のようなメモリー集約型ワークロードに対して、クラウドのキャパシティーを高め、経済性を改善する設計が行われました。

  • 新しいハードウェアに対するセキュリティー機能

エンドツーエンドのセキュリティーをサポートする透過的なメモリー暗号化が含まれています。また、IBM POWER10プロセッサーは、今日最も需要の高い暗号化規格や耐量子暗号/完全準同型暗号といった将来の暗号化規格に対応したAES暗号化エンジンが、IBM POWER9プロセッサーと比較してコアあたり4倍も搭載されています。さらに、コンテナーのセキュリティーに対する新しい拡張機能も利用できるようになります。

  • 新しいプロセッサー・コア・アーキテクチャー

IBM POWER10プロセッサーには、行列計算アクセラレータが搭載されており、ビジネス・アプリケーションへのAIの組み込みと、さらなる洞察を導き出すために、IBM POWER9と比較してソケットあたり32ビット単精度浮動小数点演算 (FP32)で10倍、16ビット半精度2進浮動小数点演算(BFloat16)で15倍、8ビット整数演算(INT8)で20倍も高速な処理が期待されています。

IBM Cognitive Systemsゼネラル・マネージャーであるスティーブン・レナード(Stephen Leonard)は次のように述べています。「企業が利用するハイブリッドクラウドには、ハードウェアと最適化されたソフトウェアで構成され、オンプレミスとオフサイトで一貫して展開できる堅牢なアーキテクチャーが必要です。私たちはIBM POWER10で、企業が必要とするハイブリッドクラウド向けに優れたプロセッサーを設計し、お客様がIBMに期待する処理能力とセキュリティーをお届けします。Red Hat OpenShiftがハイブリッドクラウドの標準的な選択肢として位置付けられている点を踏まえ、IBM POWER10はハードウェアによってキャパシティーとセキュリティーを強化し、コンテナをITインフラストラクチャーと見なせるレベルに引き上げます。」

IBM POWER10 7nmフォーム・ファクターがエネルギー効率とキャパシティーの向上を実現

IBM POWER10は、7nmプロセス・テクノロジーを使用して製造される、IBM初の商用プロセッサーです。IBMはサムソン電子と10年以上にわたる研究開発を共同で行なっており、IBM Research Allianceを通じた半導体業界初の7nmテスト・チップ製作も行なっています。

この最新テクノロジーを採用し、処理能力と効率性の向上に重点を置いて設計されたIBM POWER10は、プロセッサー・ソケットあたりのエネルギー効率を最大3倍に向上させ、IBM POWER9と同じパワー・エンベロープでワークロード・キャパシティーを拡大することが期待されています。今回予定されているキャパシティー向上で、IBM POWER10搭載システムが、IBM POWER9搭載システムと比較して最大で3倍のユーザー、ワークロード、およびハイブリッドクラウド・ワークロードのOpenShiftコンテナー密度をサポートできるようなっています。1

この効果はデータセンターの複数の属性に恩恵をもたらし、設置面積や消費電力の効率向上とコスト削減を実現すると同時に、ハイブリッドクラウドを利用されるお客様はより少ないフットプリントでより多くの処理ができるようになります。

ハードウェアの機能強化により、ハイブリッドクラウドのセキュリティーがさらに向上

現在の主要な暗号化規格および、耐量子暗号/完全準同型暗号といった今後予定されている暗号化プロトコルの両方に対応するAES暗号化エンジンがIBM POWER10に追加されたことにより、IBM POWER10はエンドツーエンドのセキュリティーと高速暗号化の処理能力を実現するハードウェア・メモリー暗号化をご提供します。現在、最も使われている暗号化規格を使用した社内テストの測定結果によると、IBM POWER10はIBM POWER9よりも40%速くデータを暗号化することが可能です。

さらに、コンテナの高密度化によって懸念される新たなセキュリティー上の考慮事項に対処するために、IBM POWER10は、IBM POWER10ファームウェアと共に開発されたハードウェア強制型コンテナ保護や分離機能を新たに提供しています。もし、コンテナーが不正アクセスされた場合には、IBM POWER10プロセッサーは同じ仮想マシン(VM)内の他のコンテナにも同じ影響が及ばないようにすることが可能です。

サイバー攻撃は進化を続けており、新たに発見された脆弱性は、組織が修正を待っている間に混乱を引き起こす恐れがあります。IBM POWER10は、お客様が新しいアプリケーションの脆弱性を能動的かつリアルタイムに防御できるよう設計されており、動的実行レジスター制御機能をお客様にご提供します。お客様は処理能力の損失を最小限に抑えながら、攻撃に対してより耐性のあるアプリケーションを設計できます。

マルチ・ペタバイト・サイズのメモリー・クラスタリングにより、複数のハイブリッド展開を可能にする柔軟性を実現

IBM POWERは、ハードウェアとソフトウェアの機能を組み合わせることで、ハイブリッドクラウド環境やオンプレミス環境において、幅広く柔軟にワークロードをデプロイできるよう、長年にわたり支援してきました。IBM POWER10プロセッサーは、さまざまな構成のIBM POWER10プロセッサー搭載システム全体の物理メモリーを確保したり、クラスター化することで、デプロイ機能をさらに進化させます。IBM POWER10プロセッサーに搭載される画期的な新しいテクノロジーであるMemory Inceptionは、一度有効化されると、クラスター内にある任意のIBM POWER10プロセッサー搭載システムが相互のメモリーにアクセスして共有できるように設計されており、マルチ・ペタバイト・サイズのメモリー・クラスターを構築できます。

クラウド事業者やお客様にとって、Memory Inceptionはコストとエネルギーの節約を促進する可能性をもたらします。クラウド事業者はより少ないサーバーでより多くの機能を提供し、お客様はより少ないリソースでITニーズを満たすことが可能になります。

ハイブリッドクラウド環境にAIを導入し、より深い洞察を提供

トランザクションやアナリティクスのワークフローで使用するビジネス・アプリケーションにAIが組み込まれるようになるにつれて、AI推論が企業のアプリケーションの中で重要性を増していきます。IBM POWER10プロセッサーは、専用のハードウェアを追加しなくても、コア内部のAI推論能力を拡張する設計が行われています。

プロセッサーに組み込まれた行列計算アクセラレータによって、IBM POWER10プロセッサーは、企業のAI推論ワークロードの性能を、IBM POWER9と比較してソケットあたり32ビット単精度浮動小数点演算 (FP32)で10倍、16ビット半精度2進浮動小数点演算(BFloat16)で15倍、8ビット整数演算(INT8)で20倍も高速な処理2が期待されており、企業が自社で学習したAIモデルを活用して現場での作業を高速化します。IBMの幅広いAIソフトウェア・ポートフォリオを備えたIBM POWER10により、一般的な企業のアプリケーションにAIワークロードが統合され、データからより深い洞察を導き出すことができます。

未来のハイブリッドクラウドを構築

2021年後半に提供を予定しているIBM POWER10搭載サーバーは、ハードウェアとRed Hatソフトウェアとがお互いに最適化され、ハイブリッドクラウドの未来を実現します。2018年の発表の通り、業界をリードするサムソンの半導体製造技術とIBMの設計技術が集約されるIBM POWER10は、サムソン電子が製造を担当します。

以上

IBM POWER10がハイブリッドクラウド市場にもたらす効果についての詳細は、こちらをご覧ください。
https://www.ibm.com/blogs/systems/jp-ja/stephen-leonard-power10/

IBM Power Systemsについての詳細は、こちらからご覧ください。
https://www.ibm.com/jp-ja/it-infrastructure/power

脚注:
*1: 3倍の性能は、整数、エンタープライズ、そして浮動小数点について、同じエネルギー・レベルであるPOWER10デュアル・ソケット・サーバー(30コア・モジュール 2個)とPOWER9デュアル・ソケット・サーバー(12コア・モジュール 2個)とを、プレシリコン段階において設計分析した結果に基づきます。
*2: 10倍から20倍のAI推論性能の向上は、様々なワークロード(Linpack、Resnet-50 FP32、Resnet-50 BFloat16、Resnet-50 INT8)について、POWER10デュアル・ソケット・サーバー(30コア・モジュール 2個)とPOWER9デュアル・ソケット・サーバー(12コア・モジュール 2個)とを、プレシリコン段階において設計分析した結果に基づきます。

当報道資料は、2020年8月17日(現地時間)にIBM Corporationが発表したプレスリリースの抄訳です。原文は下記URLを参照ください。
https://newsroom.ibm.com/2020-08-17-IBM-Reveals-Next-Generation-IBM-POWER10-Processor (英語)

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