ニュースリリース

IBM、NVIDIA、Stone Ridge Technologyが、石油ガス分野でハイパフォーマンス・コンピューティングの新記録を達成

2017年05月 9日
 

 

- 従来の10分の1の電力と100分の1のスペースで実施された10億セルのシミュレーションにより、これまでの公式記録を更新
- 60個のIBM POWERプロセッサーと120個のGPUアクセラレーターにより、92分で記録を達成(過去の公式記録は70万個以上のプロセッサーで20時間)

[米国ニューヨーク州アーモンク - 2017年4月25日(現地時間)発]
IBM(NYSE:IBM)とStone Ridge Technologyは本日(現地時間)、油層シミュレーションで画期的なパフォーマンスを達成したことを発表しました。このシミュレーションは、生産効率の向上とコスト削減を実現します。両社は、NVIDIAとの協力を通じて、従来の10分の1の電力と100分の1のスペースで、これまでの公式記録を塗り替えました。これは、NVIDIAのGPUが、10億セルのモデルを公式記録よりもはるかに短い時間で実行できるほか、旧来のCPUコードの10倍にも及ぶパフォーマンスと効率性を実現することを証明しています。

この画期的な記録は、60個のPOWERプロセッサーと120個のGPUアクセラレーターを使用することにより、70万個以上のプロセッサーを使った過去のスーパーコンピューターによる記録を更新しました。今回の記録の狙いは、油層のシミュレーションと探査の高度なビジネスジャッジ目的で利用されるハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)のコストとパフォーマンスを刷新することです。

エネルギー企業は、どうすれば多くの石油をより効率的に取り出せるかを検討するため、実際の掘削を行う前に、油層モデリングを用いて地表下の石油、水、天然ガスの流れを予測しています。10億セルのシミュレーションは、非常に詳細なデータを提供することから、極めて困難な作業であると言えます。油層シミュレーションソフトウェア「ECHELON」の開発者であるStone Ridge Technologyは、60個のPOWERプロセッサーが搭載された30台のIBM® Power Systems S822LC for HPCサーバーと、120個のNVIDIA Tesla P100 GPUアクセラレーターを使って、10億セルの油層シミュレーションを92分で完了しました。

Stone Ridge Technology社長のヴィンセント・ナトリ(Vincent Natoli)氏は、次のように述べています。「このたびの結果は、GPUが実現する高い計算能力とソリューションの連携が実現する効果を顕著に示しています。このスピードのおかげで、油層エンジニア達は、以前よりも多くのモデルや「What-if(仮説)」シナリオを実行することが可能になります。その結果、石油をより効率的に生産し、油田の新規開発を減らし、限られた資源の責任ある利用を促すための貴重な洞察を得やすくなります。計算能力や効率性を1桁以上高めることにより、油層シミュレーションのコミュニティーにHPCの活用を普及させたいと思っています」

IBMのハイパフォーマンス・コンピューティング、AIおよびアナリティクス担当バイス・プレジデントのスミット・グプタ(Sumit Gupta)は、次のように述べています。「このたびの画期的な結果は、IBM POWERアーキテクチャーがデータ集約型のコグニティブ・ワークロードに対して有効であることを示しています。IBM Power Systems上でECHELONを実行すると、従来よりも少ないハードウェアで、実行時間も短縮することができます。以前の記録は、サッカー場の半分近くの面積を占めるスーパーコンピューターで、70万個以上のプロセッサーを使って達成されました。しかし、Stone Ridgeの今回の計算で使われたのは、卓球台の半分のスペースに収まる2ラック分のIBM Power Systemsです」

今回の取り組みは、「油層シミュレーターのような複雑なアプリケーション・コードにGPUを用いるのは効率的ではない。GPUはむしろ、地震探査のような、シンプルでパラレルな性質のアプリケーションに適している」という従来の誤った認識への挑戦です。今回報告された結果は、そのスケール、スピード、および効率性の点で、このような先入観に対する反証となります。このたびの画期的な成果は、比較的小規模なサーバー・インフラストラクチャーで達成されたことから、今後は中小規模の石油・エネルギー企業でも、コンピューターによる油層モデリングを利用すれば、その資産ポートフォリオからの生産を最適化することができると考えられます。

10億セルのシミュレーションは業界内ではこれまであまり行われていませんでしたが、今回の計算によって、ECHELON油層シミュレーターのような完全にGPUをベースとした新しいコードと同様のレガシーCPUコードとの間に、顕著なパフォーマンスの差があることを明らかにすることができました。ECHELONは、ワークステーションから大規模クラスターまで拡張できるため、デスクトップ・ワークステーションの単一のNVIDIA P100ボード上での小規模モデルの実行から、場合によっては、30台のサーバー上で10億セルの大規模シミュレーションまでも可能になりました。

NVIDIAのソリューション・アーキテクチャーおよびエンジニアリング担当バイス・プレジデントのマーク・ハミルトン(Marc Hamilton)氏は、次のように述べています。「エネルギー産業は、世界に先駆けてGPUを数値モデリングに採用し、GPUを地震探査処理の加速化に使用しています。GPUは現在では、油層シミュレーションの分野で大きな効果を発揮しています。今後はさらに、膨大な計算が求められる石油ガス分野の他のワークフローにも幅広く使われるようになると見込まれます」

今回の記録達成は、NVIDIAのGPUを搭載したIBM Power Systemsが、製造業や科学コミュニティーで活用されている数値流体力学、構造力学、気候モデリングなどの他の分野でもパフォーマンスを同様に飛躍的に伸ばせる能力を持っていることを示しています。

当報道資料は、2017年4月25日(現地時間)にIBM Corporationが発表したプレスリリースの抄訳です。原文は下記URLを参照ください。 
https://www-03.ibm.com/press/us/en/pressrelease/52164.wss (US)

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