ニュースリリース
IBM、量子システムの拡張と世界最先端のエコシステムを提供
TOKYO - 17 11 2017:
2017年11月17日
-- 20量子ビットのお客様システム環境の提供
-- 50量子ビット・プロセッサーを初めて実装した次世代のIBM Qシステムの開発を推進
-- オープン・ソースの量子ソフトウェア・パッケージQISKitを拡張し、量子コンピューティングにおける世界最先端のエコシステムを提供
[米国ニューヨーク州ヨークタウン・ハイツ - 2017年11月10日(現地時間)発]:IBM(NYSE:IBM)は本日、IBM® Q早期アクセス版商用システムにおける量子プロセッサーに関して、2つの重要なアップグレードを発表しました。このアップグレードは、量子ハードウェアが急速に進化していることを示しています。IBMは、システム、ソフトウェア、アプリケーション、支援ツール、利用ガイドに重点を置き、量子コンピューティング・テクノロジー全般にわたる発展を引き続き推進していきます。
- お客様に対して初めてオンラインで提供されるIBM Qシステムには20 量子ビットのプロセッサーが搭載され、超電導の量子ビット設計、接続性、パッケージングが改善されます。コヒーレンス時間(量子計算を実行するために利用可能な時間)は、平均90マイクロ秒でこの分野をリードしており、精度の高い量子処理を実現します。
- IBMは、50 量子ビット・プロセッサーのプロトタイプの構築に成功し、同様の性能指標を持つことを測定により確認しました。この新しいプロセッサーは、20 量子ビット・アーキテクチャーに基づいて拡張され、次世代のIBM Qシステムで利用可能となります。
IBM 50Q System
50量子ビット・システムの低温保持装置(提供:IBM)
20 & 50 Qubit Arrays
図左より、
- 20量子ビット・システムの量子ビットの接続関係
- 50量子ビット・システムの量子ビットの接続関係
- 最初のIBM Qシステムの量子プロセッサー・パッケージ
(提供:IBM)
お客様は、2017年末までにIBM Qシステムのコンピューティング・パワーにオンラインでアクセスできるようになります。2018年には、さらに一連のアップグレードが計画されています。IBMは、実用的なアプリケーションを開発できるよう、高度で拡張性が高い汎用量子コンピューティング・システムをお客様に提供することに注力しています。2016年5月に量子コンピューターへの無償オンライン・アクセスをすべてのユーザーに初めて提供し、その後第二世代、第三世代とシステムを進化させ多くの成果を残しました。この18カ月間、IBMは、IBM Q Experienceを通じて5 量子ビットと16 量子ビットのシステムを一般ユーザーにアクセス可能とし、世界最先端の量子コンピューティング・エコシステムを発展させてきました。
IBM Research バイス・プレジデントAI and IBM Q担当のダリオ・ギル(Dario Gil)は、次のように述べています。「IBMは、お客様と世界に価値を提供できるテクノロジーの開発に、以前から取り組んでおり、これからも注力していきます。ほんの数年前までは、複数の量子コンピューターを高い信頼性で運用し、オンラインで提供することは、不可能でした。現在、科学と技術の大幅な発展により、私たちは、最大50 量子ビットまでIBMプロセッサーを拡張することができるようになってきました。従来のコンピューターでは扱えない問題に取り組める機会を提供することができました。」
今後1年間で、IBM Qに携る研究員は、量子アルゴリズムをさらに探求するために、量子ビットの品質、回路の接続性、処理のエラー率を含むデバイスの改善に引き続き取り組みます。これまでも、IBMでは、6カ月で20 量子ビット・プロセッサーのコヒーレンス時間を、IBM Q Experienceで一般に提供されている5 量子ビットと16 量子ビットのシステムの2倍に延長することができました。
システム構築に加えて、IBMは、堅牢な量子コンピューティング・エコシステムを引き続き発展させます。これには、オープン・ソースのソフトウェア・ツール、次世代システム向けのアプリケーション、量子コミュニティー向けの教材や利用ガイド提供が含まれています。IBM Q Experienceを通じて、6万人以上のユーザーが170万回を超える量子実験を行い、35を超えるサード・パーティーの研究論文が作成されました。世界中の1,500以上の大学、300の高校、300の民間機関からユーザーが登録し、その多くは通常の教育の一環としてIBM Q Experienceにアクセスして利用しています。このような形式のオープンな利用と研究は、量子コンピューティングの学習と実現を加速するために不可欠です。
量子研究者とアプリケーション開発のエコシステムを拡大するべく、IBMは今年初め、量子コンピューターのプログラミングと実行のためのオープン・ソース開発者キット「QISKit(www.qiskit.org(英語))プロジェクト」を開始しました。QISKitは、IBM Q研究者によって拡張され、ユーザーはオンラインで利用可能なIBMの量子プロセッサーならびに量子シミュレーター上で量子コンピューティング・プログラムを作成して実行できます。さらに、量子システムの状態を精査するための新しい機能と可視化ツール、QISKitとIBM Data Science Experienceとの統合、任意の実験を利用可能なハードウェアにマッピングするコンパイラ、量子アプリケーションのサンプルなどがQISKitに追加されました。
量子コンピューティングは、従来型コンピューターでは永遠に解けなかった問題(最適化の化学シミュレーションなど)を解く可能性があります。最近のNature誌で、IBM Qに携わる研究チームが量子ハードウェアを利用して化学問題を検証する新たな方法を開拓しました。新薬や新しい原料を発見する方法にいつの日か変革をもたらすことでしょう。この量子化学の発展につながった実験を再利用するJupyter Notebookは、QISKitチュートリアルで利用可能です。”最大カット問題”および“巡回セールスマン問題”などの最適化に関する問題をIBMの量子ハードウェアに実装するための詳細情報も提供されています。
この革新的な試みは、近い将来、新しいデバイスを使用して興味深い問題を解決できること、および従来のコンピューターを凌駕する量子システムの優位性を実証しています。IBMは、小規模の汎用量子コンピューティング・システムで問題に取り組むことで大きな進歩を遂げました。現在、エラー軽減および量子ビットの質の改善に注力しており、近い将来、量子コンピューティング・システムの実用的なアプリケーション開発に役立つはずです。さらに、IBMには、量子コンピューターの実用的なアプリケーションをIBM Research Frontiers Instituteを通じて研究する業界パートナーがいます。IBM Research Frontiers Instituteは、革新的なコンピューティング・テクノロジーのポートフォリオを開発して共有し、事業への適用性を評価するコンソーシアムです。創設メンバーは、Samsung、JSR、本田技術研究所、日立金属、キヤノン、長瀬産業の6社です。
こうした量子コンピューターに関する進歩は現在、IEEE Rebooting Computing Weekの一環としてIEEE Industry Summit on the Future Of Computingで提示されています。
IBM Qは、ビジネス・アプリケーションおよび科学アプリケーション用に商業的に利用可能な汎用量子コンピューティング・システムを構築することを目的とした業界初のイニシアティブです。IBMの量子コンピューティングの取り組みに関して詳しくは、http://www.ibm.com/ibmq(US)を参照ください。
IBM Researchについて
70年以上に渡り、IBM Researchは世界12箇所にある研究所、3,000名以上の研究員とともにテクノロジーの未来を明らかにしています。IBM Researchからは、6名のノーベル賞受賞者をはじめ、U.S. National Medals of Technologyの受賞歴10回、U.S. National Medals of Scienceの受賞歴5回、Turing Awardの受賞歴6回の実績に加えて、19名のNational Academy of Sciencesそして20名のU.S. National Inventors 殿堂入りを輩出しています。
IBM Researchに関する詳しい情報は、www.ibm.com/research(US)をご覧ください。
当報道資料は、2017年11月10日(現地時間)にIBM Corporationが発表したプレスリリースの抄訳です。原文は下記URLを参照ください。
https://newsroom.ibm.com/2017-11-10-IBM-Announces-Advances-to-IBM-Quantum-Systems-Ecosystem(US)
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