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IBM、量子優位性とフォールト・トレランス実現に向け、新たな量子プロセッサー、ソフトウェア、アルゴリズムのブレークスルーを発表

IBM Quantum Nighthawk: 量子優位性を実現するために設計された新プロセッサーで、従来より30%複雑な量子回路を実行可能
パートナー企業とともに、オープンなコミュニティー主導の量子優位性トラッカーに3件の実験を提供。それらの結果は、最先端の古典シミュレーション手法と同等の性能を示す
Qiskitの新機能により、動的回路(ダイナミック・サーキット)を用いた精度が24%向上し、HPCによるエラー緩和で正確な結果抽出コストを100分の1以下に削減
IBM Quantum Loonは、フォールト・トレラント量子コンピューティングに必要なハードウェア要素をすべて実証
既存の最先端の手法*1と比較して量子エラー訂正デコードを10倍高速化。予定より1年早く達成
300mmウェハー製造施設への移行により開発スピードを2倍に高め、フォールト・トレラントのエラー訂正ロードマップのために物理的に10倍複雑な量子チップを作成可能
2025年11月13日

【米国ニューヨーク州ヨークタウン・ハイツ - 2025年11月12日(現地時間)発】

IBMは本日、年次イベント「Quantum Developer Conference」において、2026年末までの量子優位性の達成、ならびに2029年までのフォールト・トレラント量子コンピューティングの提供に向けた重要な進展を発表しました。

 

IBM ResearchディレクターでIBMフェローのJay Gambetta(ジェイ・ガンベッタ)は、次のように述べています。「真に有用な量子コンピューティングを実現するためには、多くの重要な柱となる技術が必要です。IBMは、量子ソフトウェア、ハードウェア、製造、エラー訂正のすべてを迅速に発明・拡張し、革新的なアプリケーションを実現できる体制を備えた唯一の企業であると確信しています。本日、これらの重要なマイルストーンを発表できることを大変嬉しく思います」

 

量子優位性まで拡張可能なIBM Quantumコンピューター

IBMは、これまでで最も先進的な量子プロセッサー「IBM Quantum Nighthawk」を発表しました。本プロセッサーは、高性能な量子ソフトウェアと補完し合うアーキテクチャーを採用しており、来年には、量子コンピューターが古典的のみのあらゆる手法より優れた方法で解決できる量子優位性の実現を目指します。

IBM Quantum Nighthawkは2025年末までにIBMユーザーへ提供開始予定であり、以下の特長を備えています。

  • 120個の量子ビットを四角格子状に配置して搭載し、218個の次世代チューナブル・カプラーで4つの最近傍と接続され、IBM Quantum Heronプロセッサーと比較してカプラー数が20%以上増加。
  • この強化された量子ビット接続により、従来のプロセッサーと比べて30%複雑な回路を高精度かつ低エラー率で実行可能。
  • 最大5,000の二量子ビット・ゲートを実行でき、分子の基底状態エネルギーを求めるなど、分子の内部構造の解明に不可欠な高度な計算が可能。

 

IBMは、2026年末までにIBM Quantum Nighthawkの将来のバージョンで最大7,500ゲート、2027年には最大10,000ゲートの実行を見込んでいます。2028年までには、長距離カプラー(long-range couplers)により1,000以上の量子ビットを接続することで、最大15,000の二量子ビット・ゲートをサポートするシステムへと発展する見込みです。

 

IBMは、量子優位性が実証される最初の事例が、2026年末までに広範なコミュニティーによって確認される見込みであると述べています。これらの厳密な検証を促進し、量子および古典的手法の最適なアプローチを推進するため、IBMはAlgorithmiq社、Flatiron Instituteの研究者、BlueQubit社とともに、量子優位性の新たな実験結果をオープンでコミュニティー主導のトラッカーに提供しています。このトラッカーは、量子優位性の新たな実証を体系的に監視・検証するためのものです。

 

現在、このコミュニティー・トラッカーは、観測可能な推定、変分問題、効率的な古典的検証が可能な問題の3領域において量子優位性の実験をサポートしています。IBMはコミュニティーがこのトラッカーに貢献し、最良の古典的手法との相互検証を積極的に促進していきます。

 

Algorithmiq社のCEO兼共同創設者であるサブリナ・マニスカルコ(Sabrina Maniscalco)氏は、次のように述べています。「Algorithmiqのチームが、新たな量子優位性トラッカーにおける3つのプロジェクトのうち1つを主導していることを誇りに思います。私たちが設計したモデルは、これまでに検証されたあらゆる最先端の古典的手法を超えるほど複雑な領域を探求しています。私たちは有望な実験結果を確認しており、Flatiron Instituteの研究者による独立したシミュレーションも、その古典的困難性を検証しています。これはまだ第一歩にすぎません。量子優位性の検証には時間を要しますが、トラッカーによって誰もがその過程を追うことができるようになります」

 

BlueQubit社のCTO兼共同創設者であるヘイク・テパニャン(Hayk Tepanyan)氏は、次のように述べています。「BlueQubitは、量子コンピューターが古典的手法を超える領域に入りつつある中で、IBMの量子優位性の主張やアルゴリズムを追跡する取り組みを支援できることを誇りに思います。ピーク回路に関する私たちの研究を通じて、量子コンピューターが古典コンピューターを桁違いに上回り始めている事例を形式化することに貢献できることを嬉しく思います」

 

量子ハードウェアのブレークスルーに基づく検証済みの量子優位性を追求するためには、開発者は回路を高度に制御でき、計算中に発生するエラーを緩和するために高性能な古典コンピューター(HPC)を活用する必要があります。

 

 Qiskit は、IBMが開発した世界最高性能の量子ソフトウェア・スタックです。Qiskit は現在、100量子ビットを超えるスケールで精度を24%向上させる動的回路機能を拡張し、開発者がこれまで以上に回路を制御できるようにしています。また、Qiskitを拡張して、きめ細かな制御を可能にする新しい実行モデルとC-APIを提供します。これによりHPCによるエラー緩和機能の加速が実現し、正確な結果を得るためのコストを100分の1以下に削減します。

 

量子コンピューターが成熟するにつれ、グローバルな量子研究コミュニティーはHPCや科学技術分野のコミュニティーへと広がっています。IBMは、既存のHPC環境上で量子プログラミングをネイティブに実行できるよう、C-APIを基盤としたQiskitのC++インターフェースを提供します。IBMは、動的回路やエラー緩和のための回路実行制御を含む先進的な回路実行機能の分野で、引き続き業界をリードしています。

 

2027年までに、IBMは、機械学習や最適化といった分野の計算ライブラリーを用いてQiskitを拡張し、微分方程式やハミルトニアン・シミュレーションといった物理・化学分野の基礎的課題をより効果的に解決できるようにする計画です。

 

フォールト・トレラント量子コンピューティング実現に向けた構成要素を提供

並行する取り組みとして、IBMは2029年までに世界初の大規模フォールト・トレラント量子コンピューターを構築するためのマイルストーンを急速に達成しています。

 

IBMは、フォールト・トレラント量子コンピューティングに必要なプロセッサー・コンポーネントを全て実証したことを初めて示す実験的プロセッサー「IBM Quantum Loon」を発表しました。IBM Quantum Loonは、実用的で高効率な量子エラー訂正に必要な構成要素を実装およびスケールするための新しいアーキテクチャーを検証する予定です。IBMはすでに、IBM Quantum Loonに組み込まれた画期的な機能を実証しており、その中には、複数の高品質・低損失の配線層を導入し、近傍カプラーを超えて同一チップ上で遠く離れた量子ビットを物理的に接続するためのより長いオンチップ接続(「cカプラー」)の経路を提供する技術や、計算の合間に量子ビットをリセットする技術が含まれます。

 

フォールト・トレラント量子コンピューティングのもう一つの重要な柱として、IBMはqLDPCコードを用いることで、古典コンピューティング・ハードウェア上で480ナノ秒未満のリアルタイム・エラー・デコードを正確に実行できることを実証しました。この技術的成果は、予定より1年早く達成されました。IBM Quantum Loonと合わせて、これはIBMの量子コンピューターの中核を成す高速・高忠実度の超伝導量子ビット上でqLDPCコードをスケール化するための基盤が確立されたことを示しています。

 

量子ウェハー開発を加速するため、300mm製造施設へ移行

IBMは、量子コンピューターの拡大に伴い、ニューヨーク州のAlbany NanoTech Complexにある先進的な300mmウェハー製造施設で量子プロセッサー・ウェハーの主要な製造を行うことを発表しました。

 

この施設に備わる最先端の半導体製造装置と常時稼働の環境により、IBMは量子プロセッサーの性能向上・改良・機能拡張のサイクルをこれまで以上に迅速化しています。これにより、量子ビットの接続性、密度、性能をさらに向上させることが可能になりました。これまでにIBMは以下を達成しました。

  • 各新プロセッサーの製造に要する時間を半分以下に短縮し、研究開発スピードを2倍に向上
  • 量子チップの物理的複雑さを10倍に拡大
  • 複数のチップ設計を並行して研究・検証できる体制を実現

以上

*1:最新の手法(https://arxiv.org/abs/2510.25213)との比較に基づく

 

当報道資料は、2025年11月12日(現地時間)にIBM Corporationが発表したプレスリリースの抄訳をもとにしています。原文はこちらを参照ください。

 

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  • Download IBM researcher holds IBM Quantum Nighthawk chip (Credit: IBM)
    IBM researcher holds IBM Quantum Nighthawk chip (Credit: IBM)
  • Download IBM Quantum Loon chip (Credit: IBM)
    IBM Quantum Loon chip (Credit: IBM)
  • Download IBM researcher holding 300mm IBM Quantum Nighthawk wafer (Credit: IBM)
    IBM researcher holding 300mm IBM Quantum Nighthawk wafer (Credit: IBM)
  • Download 300mm cleanroom at the Albany NanoTech Complex in Albany, NY (Credit: IBM)
    300mm cleanroom at the Albany NanoTech Complex in Albany, NY (Credit: IBM)

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