ニュースリリース
気候変動へのレジリエンスを強化するEnvironmental Intelligenceの導入
著者:アディティヤ・コスラ(ESG&アセット・マネジメント、プロダクト・グロース担当)、キミ・ジャスジャ(サステナビリティー・ソフトウェア担当プロダクト・マネージャー)
組織は、現在の環境問題への効果的な対応を支援するために、情報に基づいたタイムリーな意思決定を行うための有意義なデータを必要としています。例えば、地理空間データ、温室効果ガス排出量データ、気象データ、気候影響データ・セットにアクセスすることは、企業が拡張可能性が高く気候変動に強いソリューションを構築する上で不可欠です。しかし、特定のデータ・セットや洞察にアクセスすることは困難です。
IBMは、データサイエンティストやアプリケーション開発者が環境データ・セットを活用できるように設計された新しいプラットフォーム「IBM Environmental Intelligence」を発表しました。このプラットフォームは、2024年6月にパブリックプレビューを開始し、公共および商用データ・セットから収集されたグローバルな環境データ、すぐに使えるモデル、およびコネクターを備え、特定のイベントと連携してアラートを生成し、ミッション・クリティカルなソフトウェアや日常業務へのデータ統合をサポートします。Environmental Intelligenceは、最先端のテクノロジーと専門知識を活用し、お客様が事業活動全体の環境リスクと不確実性をプロアクティブに管理することで、気候変動による事業損失や負債による潜在的な財務的影響を軽減できるよう支援します。
IBMはこの新たなテクノロジーによって、データの専門家が競争優位性を獲得できるようにしようとしています。Environmental Intelligenceは、以下の主な機能を通じて、その実現を支援します。
地理空間API
IBM Environmental Intelligenceは、アプリケーション開発者やデータサイエンティストが地球の表面で何が起こっているかという情報を収集し、そのデータを使用してさまざまな結果を予測し、予防的な行動方針を考えるのに役立つ、広範な地理空間APIを提供します。気象や気候に関する洞察を得るために、すぐにアクセスできる公共の衛星データは豊富にあります。しかし、この情報を利用するためには、データサイエンティストはかなりの時間と労力を費やしてこのデータを処理・操作し、その先にあるアプリケーションで利用できるようにする必要があります。そこでIBM Environmental Intelligenceは、科学的分析や視覚化用に公開データ・セットを地理空間レイヤーへと処理、正規化、整理することによって、この手順を簡素化します。APIやPython Geospatial SDKを活用することで、高解像度画像(ESA Sentinel 2やNASA Landsat 8)、Global weather(ERA5)、PRISM daily US weather、Wildfire risk potential、Soil Properties USA、JAXA ALOS 3D Globalなどのデータ・セットを扱うことができます。これにより、ユーザーはより簡単にデータを照会し、迅速に貴重な洞察を得ることができます。APIのリストはこちらをご参照ください。
地理空間AI基盤モデルの探求
ペタバイト単位で計測される膨大な量のリモート・センシング・データは、取り扱いが非常に複雑です。このデータを特定の環境目的のために効果的に使用するために、データサイエンティストは、多くの場合、特定のタスクのために人工知能(AI)技術を採用してデータを前処理し、AIアルゴリズムを学習させて、ディープ・ラーニング・モデルを開発する必要があります。
この課題に対処するため、IBMは事前学習された地理空間AI基盤モデルを導入しました。衛星データのHarmonized Landsat Sentinel-2を活用したこのモデルは、2~3日間隔で、より一貫性のある包括的な地球のビューを提供します。適応性、精度、自己教師付き学習能力、および下流の予測分析向けの高解像度衛星画像とLiDARの組み合わせへの依存が、この基盤モデルの特長です。
このような地理空間AIモデルの活用は、主に、データのラベリング負担を軽減すること、ターゲットとなるソリューションを構築するための一貫した基盤を提供すること、という2つの点で役立ちます。データの専門家や開発者は、大量のデータのラベリングや特注モデルの構築に貴重な時間を費やす代わりに、洪水の検出や樹冠の高さの推定といった一連のアプリケーションのためのAIモデルのファイン・チューニングに集中することができます。
地理空間基盤 モデルベースの推論
Above Ground Biomassモデルは、事前学習されたAI基盤モデルを使用して、投資されたバイオマス中の炭素を追跡し、持続可能性の目標をサポートするために炭素クレジットを使用する組織に対応します。例えば、森林伐採が炭素隔離に与える影響を研究する研究者は、APIを使用して様々な森林地域の地上バイオマスを計算し、これらの値を過去のデータと比較して経年変化を評価することができます。IBMはQuellia社にAPIを提供しており、種固有のデータを含む、過去と将来の地上バイオマスのベースラインをカバーしています。Environmental Intelligenceは、地理空間画像とAIを使用して土地区画分析を加速し、認証モデルによる透明性を保証します。Quellia社は、信頼性の高い認証とモニタリングのためにデジタル技術を活用し、自主的な炭素市場において安全な存在を確立することを目指しています。IBMとの連携により、Quellia社は利害関係者をサポートする包括的なソリューションを構築し、透明性とトレーサビリティーを促進しています。
この技術の活用方法のもうひとつの例は、規制要件への対応支援です。2024年12月までに発効が予定されている欧州森林破壊防止規制(EUDR)では、特定の商品(パーム油、大豆、牛肉、木材製品)の取引業者や事業者に対し、これらの商品が森林減少のない土地から調達され、森林劣化を引き起こしていないことを保証するよう求めます。Above Ground Biomassモデルは、EUDR対象商品の取引を行う企業が、一貫性のない地理空間データや、長期間にわたる植林データを入手できないといったコンプライアンス実証に関する課題を克服できるように設計されています。また、企業はバイオマス推定機能を活用することで、森林伐採や森林劣化の有無を判断し、コンプライアンス要件をサポートすることができます。
IBMはまた、Yara International社と協力して、世界中の1億ヘクタールの農地を対象とした地理空間データを提供しています。この面積はスペインの国土の2倍、世界の耕地の約7%に相当します。何百万もの零細農家を含むこの農地のデータがあれば、既存の農地での食糧生産を増やし、森林破壊を回避するのに役立つ作物収量に関する洞察を得ることができます。
ヒストリカル・オンデマンドAPI
Environmental Intelligenceで利用可能なヒストリカル・オンデマンドAPIは、過去のビジネスや運用結果との関係を推定し、相関関係を作成するために必要な気象履歴コンテキストを提供するもので、科学者が将来のビジネスニーズや結果を予測するのに役立ちます。過去の気象に関する複数のデータソースと、気象予測に関する1つのデータソースを提供します。ペイロードはカスタマイズ可能で、このプラットフォームを活用することで、科学者は予測分析のためにモデルを学習することができます。
例えば、Bayer社はIBMと協力し、過去の気象データを利用して、農業食品会社向けの既製機能AgPowered Servicesを開発しています。業界のユースケースとしては、農作物保険の引き受けにおけるポートフォリオのリスク評価、農作物生産の前年比変化のより正確な予測、農学モデルを訓練するための重要なデータ・セットなどがあります。
GHG排出量API
最後に、Environmental Intelligenceは、Carbon Performance Engine内で提供されるGHG排出量APIを使用することで、組織が内部の炭素排出量を計算し、サプライチェーン全体の排出量を推定するのを支援することができます。温室効果ガス(GHG)プロトコルに従い、6つのエンドポイントの集合体であるAPIを、構造化されたデータ・セットに対して使用することで、スコープ1、2、3の排出量の詳細と計算結果を返すことができます。例えば、天然ガスの配送専門企業のエンジニアは、メタン漏れを最小限に抑えながら、天然ガスを安全かつ効率的に顧客に配送する取り組みをサポートするために、このAPIを使用することができます。
持続可能性への一歩
気候変動は地球にとって大きな脅威であり、生態系、経済、社会に大きな影響を及ぼします。アメリカ海洋大気庁(NOAA)のグローバル・モニタリング・ラボの年次報告書によると、二酸化炭素の世界平均大気レベルは419.3ppmで、2022年から2.8ppm増加しました。2ppm以上の増加は12年連続です。IBM Environmental Intelligenceは、データサイエンティストやエンジニアが、業界全体の気候・気象変動の影響を追跡し、よりレジリエントなビジネス慣行を構築し続けるソリューションを構築するために必要な環境データ・セットと高度なアナリティクスを提供します。
当報道資料は、2024年5月21日(現地時間)にIBM Corporationが発表したブログの抄訳をもとにしています。原文はこちらを参照ください。
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