ニュースリリース

IBM、世界で最も高性能な量子ソフトウェアQiskitを拡張

Qiskitが、性能と安定性に重点を置いた完全な量子ソフトウェア・スタックとして洗練化
ユーティリティー・スケール(実用規模)の量子ハードウェアのパワーをフル活用し、量子優位性に向けてユーザーはさらに複雑な量子回路を実行可能に
2024年05月16日

[米国ニューヨーク州ヨークタウンハイツ– 2024年5月15日(現地時間)発]

IBMは、本日、世界的に採用されている量子ソフトウェアであるQiskitの進化と拡張について発表しました。2017年にソフトウェア開発キット(SDK)として提供開始されたQiskitは、IBMの量子ハードウェア・システム上で量子回路を構築・実行できるようにするオープンソース・ツールで、これまでに60万人以上のユーザーが、3兆個以上の量子回路を実行しています。

 

Qiskitは、量子コンピューティング実験の探求と実行に使用される一般的な量子ソフトウェア開発キットとして始まり、100量子ビット超のプロセッサー上の複雑な量子回路から可能な限りの最高性能を引き出せるように構築された、安定した信頼性の高いサービスとツールのポートフォリオへと進化し、最新バージョンではさらなる性能を提供するための包括的なソフトウェア・スタックへと拡張しました。この拡張により、IBM Quantum Networkのメンバーは、それぞれの領域で次世代の量子アルゴリズムを発見するために必要な、最も高性能なQiskit機能が利用可能になります。

 

量子優位性に到達するためには、高度な古典計算と量子計算の両方を活用する方法でそれぞれの問題をマッピングし、量子で効率的に実行できるように問題を最適化し、実際の量子ハードウェア上で量子回路を効率的に実行できるツール・セットがユーザーに必要です。IBMは、過去7年を費やしてツールを開発し、今回、これらが統合されてQiskitソフトウェア・スタックを構成しています。

 

このQiskitの進化には、量子コンピューターの内部構造を研究するために構築された先駆的な研究ツールとしての起源から、100以上の機能更新が含まれています。そして本日、Qiskitは、成熟したソフトウェア・スタックとなり、このQiskit上で、企業や政府機関、研究機関、大学が、大規模な量子実験を実施しています。

 

最新のQiskitソフトウェア・スタックには、以下が含まれます。

  • 量子回路の構築、最適化、可視化のためのQiskit SDK 1.x安定リリース
  • Qiskit Transpiler Serviceに組み込まれた、AIを活用した量子ハードウェア用量子回路の最適化
  • 量子ハードウェア上での量子回路の高性能な実行のために調整可能なQiskit Runtime Serviceの簡便実行モード
  • 量子コード開発を自動化する、watsonxベースの生成AIモデルを搭載したQiskit Code Assistant
  • 量子ハードウェアと古典的なクラスター間で、量子を中心としたスーパーコンピューティング・ワークロードを実行するためのオープンソース・ツールであるQiskit Serverless

 

新機能の導入およびQiskit SDK内の機能向上により、ユーザーは量子ハードウェア向け回路の最適化を、Qiskit 0.33と比較して39倍高速に行うことができ、また、Qiskit 0.43と比較してメモリー使用量を平均3倍削減できることを実証しています。さらに、最新バージョンでは、Qiskit 0.43と比較して、オーバーヘッドを削減し、回路のフットプリントを縮小することができるように設計されています。

 

新しい実行モードでは、バッチ・モードを使用した場合、このモードを使用しない場合と比較して、ユーティリティー・スケールのワークロードが最大5倍高速になります。また、設計通りにQiskit Transpiler Serviceを使用すると、AIとヒューリスティック・パスを組み合わせることで、AI機能を使用しないトランスパイラーを使用した場合と比較して、回路の深さを約40%削減することができます。  

 

IBMフェロー 兼 IBM Quantum バイス・プレジデントのジェイ・ガンベッタ(Jay Gambetta)は、次のように述べています。「量子コンピューティングの世界的な普及、そして量子優位性の発見には、最先端の量子ハードウェアとワークロードを実行するための堅牢で高性能なソフトウェア・スタックの組み合わせが必要です。この2つの柱は、ユーティリティー・スケールの量子ハードウェア上ですでに始まっているアルゴリズムの発見の基礎となるものです。成長する量子エコシステムが最も困難な問題を量子回路にマッピングする中、Qiskitスタックは量子コンピューティングが得意とする計算空間を探求する礎となります」

 

IBMは、2023年に量子ハードウェアのユーティリティー・スケールの能力を初めて実証しました。これは、古典的なコンピューターよりも、量子ハードウェアの方が量子回路を高速かつ正確に実行できる時代の幕開けを告げるものでした。現在、Qiskitソフトウェア・スタックは、先進的な量子ハードウェアの性能を最大化できるように構築されており、ユーザーによるグローバルなエコシステムが、古典的な方法よりも量子コンピューターが課題を解決する上で最善の方法となり得る場所を探求する、新しい量子アルゴリズムの発見を支援することを目指しています。

 

E.ON社 エネルギー・インテリジェンス データ&AI責任者であるジョルジオ・コルティアーナ(Giorgio Cortiana)氏は、次のように述べています。「量子コンピューティングがエネルギー業界の複雑な財務や運営にどのように対処できるかを探る上で、Qiskitは重要なツール集となります。Qiskitは、ビジネスのユースケースに適用可能な量子アルゴリズムを構築、発見するための高性能な基盤として、当社のチームがユーティリティー・スケールのプロトタイプを進めることを可能にするもので、欧州のエネルギー・セクターの課題に対する新たなソリューションを見出すことを目標としています」

 

ロスアラモス国立研究所のシニア・サイエンティストであるステファン・エイデンベンツ(Stephan Eidenbenz)氏は、次のように述べています。「我々は数年前から、量子コンピューティングに対応した人材を開発する取り組みの一環として、量子コンピューターの取り組みにQiskitを使い始めました。研究所の研究者は、毎日Qiskitを使用してIBMの量子ハードウェア・バックエンドとやり取りを行い、新しいアルゴリズムのアイデアをテストしています。Qiskitのオープンな性質により、我々のチームはコンパイラーの最適化パスを追加したり、パルスレベルのアクセスを行うことができます」

 

ブルックヘブン国立研究所 エネルギー&フォトン・サイエンス担当 アソシエイト・ラボラトリー・ディレクターのジェームス・ミセウィッチ(James Misewich)氏は、次のように述べています。「ブルックヘブンでは、Qiskitを使用してIBMの量子ハードウェア上で回路を実行し、物理学、力学系、物性系などのフロンティアの探求に関するものなど、現在までに約20本の論文を発表しています。また、Qiskitによって、ボソニック回路やハイブリッド量子ビット-ボソニック回路の探求を推し進める拡張機能を開発し、基本的な量子アルゴリズムの開発やエラー訂正を前進させることができました。量子コンピューティングの科学的応用を進めるにあたり、ブルックヘブンのCo-design Center for Quantum Advantageを通じて、IBMのQiskitリソースとチュートリアルを教育プログラムに組み込んでおり、ストーニーブルック大学などの学術機関と連携して、将来の量子人材を育成しています」

 

オークリッジ国立研究所 エネルギー省量子科学センター ディレクターのトラビス・ハンブル(Travis Humble)氏は、次のように述べています。「オークリッジ国立研究所の量子コンピューティング・ユーザー・プログラムにとって、量子コンピューティング・ソフトウェアの進歩は、ユーザー・コミュニティーや開発中の技術の革新と急速な成長をサポートするのに役立ちます。ソフトウェアの性能向上は、ユーザーが今日の量子コンピューティング・システムの可能性をテスト・評価する方法に大きな影響を与えるでしょう」

 

Q-CTRL社のCEO兼 創設者であるマイケル・J・ビアキュック(Michael J.Biercuk)氏は、次のように述べています。「Q-CTRLのチームは、Qiskitを使用した開発に熱中しています。Qiskitの柔軟な新しいインターフェースと安定性の強化により、我々のユーティリティー・スケールの強力なパフォーマンス管理ソフトウェア上にシンプルな抽象化を効率的に構築可能になりました。これにより、エンドユーザーは、単一のコマンドで最も困難な問題を探求できます」

 

量子ユーティリティの時代とその先に向けて

Qiskitソフトウェア・スタックは、ベンダーにとらわれない柔軟性を含め、急速に進歩する量子ハードウェアのサポートを通じて、量子ユーティリティーの時代を進展させる画期的な量子回路を実行できるように設計されています。これは、量子回路の効率的な実行を可能にするツールの完全なポートフォリオに加え、パフォーマンスが重要なコードをRustプログラミング言語に置き換えることで達成されます。

 

IBMは、エラー訂正可能なシステムの実現に向け、IBM Quantum Development and Innovation Roadmapに沿ってマイルストーンを継続的に構築しています。また、Qiskitは、業界や専門領域を超えて拡大するグローバルなお客様のエコシステムと連携し、新しい量子アルゴリズムとアプリケーションのオープンで反復的、かつ協力的な開発のためのフレームワークを提供し続ける予定です。

 

さらに、これらの先進的な機能は、古典的なコンピューティング・リソースと量子コンピューティング・リソースを、QPU、GPU、CPUを統合した量子を中心としたスーパーコンピューティングによって定義されるハイパフォーマンス・コンピューティングの新しいパラダイムに組み入れることができるように支援することを目指しています。Qiskitの高性能ソフトウェアを通じて編成されるこのハイパフォーマンス・コンピューティングの次の進化は、世界中の産業界に、新しく、大規模で、強力な領域を切り開くことを目指しています。

 

免責事項:Qiskit のパフォーマンスに関する IBM の記述は、現バージョンのソフトウェアと、同等の機能がユーザーに利用可能であった適用可能な旧バージョンのパフォーマンスとを比較したものです。IBM の計画、方向性、意図に関する IBM の記述は、IBM の単独の裁量により、予告なく変更または撤回されることがあります。IBM製品について説明されている将来的な特徴または機能の開発、リリース、時期は、当社の単独の裁量に委ねられます。

 

当報道資料は、2024年5月15日(現地時間)にIBM Corporationが発表したプレスリリースの抄訳をもとにしています。原文はこちらを参照ください。

 

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