ニュースリリース

IBM、10万量子ビットを搭載した「量子を中心としたスーパーコンピューター」向け新技術の開発に向け、世界の大学と1億ドルの投資に基づくパートナーシップを締結

ハイパフォーマンス・コンピューティングの新しいパラダイムの創出に向け、東京大学およびシカゴ大学と10年間の画期的なパートナーシップを締結
大規模な古典システムと量子システムの統合に向けた基盤を構築するうえでの、IBM Quantumにとっての大きなマイルストーン
協業を通じて、量子を中心としたスーパーコンピューティングの開発に向けた詳細な青写真を策定予定
2023年05月21日

【日本・広島 - 2023521 発】

IBM、東京大学、シカゴ大学は本日、日本で開催されたG7サミットにおいて、10万量子ビットを搭載した量子を中心としたスーパーコンピューターの開発に向け、今後10年間で1億ドルの投資を伴う取り組みについて発表しました。

 

量子を中心としたスーパーコンピューティングは、全く新しい、そして今現在は実現されていない新時代のハイパフォーマンス・コンピューティングです。10万量子ビットの量子システムは、現在の最先端のスーパーコンピューターでも解決できないような、いくつかの世界的に最も差し迫った課題に取り組むための基盤として機能します。

 

例えば、強力な量子システムを使用することで、化学反応や分子動力学の全く新しい理解をすることができるようになります。その結果、炭素回収のより良い方法をモデリングして気候変動を調査したり、よりクリーンで持続可能な社会という目標に向け、電気自動車や電力網向けのバッテリーを作るための材料を発見したり、最も効果的でエネルギー効率の高い肥料を発見できるようになります。 

 

この新しいパラダイムを迎え入れるために、世界的な協業と、産業や研究機関の人材とリソースの活性化が始まろうとしています。IBMは、シカゴ大学や東京大学、IBMが有する広範なグローバル・エコシステムと連携し、今後10年間にわたり、このシステムの基礎となる技術の向上と、必要な構成要素の設計・構築を大規模に進めていく予定です。

 

さらに、IBMは今後これらのパートナーシップを拡大し、Chicago Quantum Exchangeのメンバーであり、それぞれがエネルギー省の量子ハブであるアルゴンヌ国立研究所とフェルミ国立加速器研究所が参画する予定です。重要なのは、両研究所が、量子を中心としたスーパーコンピューターの開発競争において想定される技術を実現させる、独自の能力と専門知識を有していることです。


IBMの会長 兼CEOであるアービンド・クリシュナ(Arvind Krishna)は、次のように述べています。「過去数年にわたり、IBMは最前線に立って、世界で量子技術の導入を進めてきました。有用な量子技術の世界的な確立に向け、IBMはロードマップとミッションに沿って大きな進展を遂げており、量子を中心とした新しいスーパーコンピューティングの本格的な探求と開発を、パートナーとともに、まさに今開始しようとしています」

 

シカゴ大学学長のポール・アリヴィサトス(Paul Alivisatos)氏は、次のように述べています。「量子技術で大規模なブレークスルーを達成するには、世界中で、産学官の幅広いパートナーとの根強く生産的な協業が不可欠です。量子情報科学技術は、基礎的な発見と技術革新が組み合わさって真のブレークスルーを生み出す岐路にあります。シカゴ大学は、この取り組みに参画することを大変嬉しく思っています」

 

東京大学総長の藤井 輝夫氏は、次のように述べています。「本パートナーシップにより、科学的なブレークスルーがもたらされ、来るべき時代に向けて量子コンピューターの導入が加速され、人類の重要な社会的課題への取り組みが活発になることを期待しています。また、多様な人材を育成することで、より良い未来社会の実現に貢献していくことを目指します」

 

量子を中心としたスーパーコンピューティングの基礎を築く

このスーパーコンピューターに向けた計画には、量子コンピューティングと量子通信の融合、ハイブリッドクラウドを介した量子コンピューターと古典コンピューターのワークフローのシームレスな統合を含む、コンピューティング・スタックのすべてのレベルでの技術革新が必要になると見込まれています。

 

このようなコンピューターは先例がないため、まずは青写真を描くことから始まります。この設計には、これまで困難な課題であった、古典コンピューターと量子コンピューターの統合が必要であり、また、量子通信と量子コンピューターの技術の新境地を開拓する必要があります。

 

このシステムの基盤には、量子インターコネクトを通じて増え続ける量子プロセッサーを拡張・接続する能力や、ノイズは多いが強力な量子プロセッサーを十分に活用するためのエラー軽減技術など、IBMがすでに量子開発ロードマップで概説しているマイルストーンが含まれます。

 

2023年末までに、IBMは、量子を中心としたスーパーコンピューターに必要なアーキテクチャー向けの3つの基礎を発表する予定です。1つ目は、新しい133量子ビットの「IBM Heron」プロセッサーです。このプロセッサーは、前世代までのIBM量子プロセッサーを完全に再設計したもので、より高いパフォーマンスを実現可能な新しい2量子ビットゲートを搭載してします。また、コンピューターのサイズを拡大するために、プロセッサーのモジュール化を可能にする将来の拡張機能にも対応する予定です。

 

2つ目は、「IBM Quantum System Two」の導入です。この新しい旗艦システムは、モジュール式で柔軟な設計であり、古典的な制御用電子機器や、高密度極低温配線のインフラストラクチャーなど、基礎となるコンポーネントにスケーリング要素を導入する予定です。このシステムは、2023年末までの提供開始を目標としています。

 

3つ目は、古典プロセッサーと量子プロセッサーの両方でワークロードを実行するためのツール群である、量子用ミドルウェアの導入です。これには、ワークロードの分解、並列実行、再構築のためのツールが含まれ、より大規模で効率的なソリューションを可能にします。

 

IBMは、今後10年間、大学のパートナーや世界中の量子エコシステムと連携し、量子インターコネクトを介して量子プロセッサーを接続する方法を進化させる予定です。この研究は、高効率で高忠実度のプロセッサー間量子演算を可能にするとともに、10万量子ビットへの拡張を可能にする信頼性、柔軟性、手頃な価格のシステム構成要素インフラストラクチャーを実現することを目指しています。

 

IBMとシカゴ大学の協業は、シカゴ地域の量子研究の強みを生かすものです。シカゴ大学は、10年以上前に、量子技術を現在のプリツカー分子工学大学院の重点研究分野とすることを決定し、この地域の量子エコシステムの基礎を作りました。その後、シカゴは量子技術研究の世界的な中心地の1つと目されるようにもなり、米国内最大級の量子ネットワークの本拠地となっています。

 

アルゴンヌ国立研究所とフェルミ国立加速器研究所、4つの大学、40以上の産業界のパートナー、そして地域の他の世界的な学術機関の研究者を含む、シカゴ大学を拠点とするChicago Quantum Exchangeの科学者は、量子技術の理解と活用の拡大への取り組みを継続します。

 

東京大学の研究者は、量子プロセッサー深部のノイズの詳細な解析、量子人工知能の効率的な計算の開発、古典と量子を組み合わせたハイブリッド計算による量子化学シミュレーションなどをテーマにIBMとの共同研究を進めてきました。

 

 

IBMの将来の方向性や意図に関する記述は、予告なく変更または撤回されることがあり、目標や目的を表すものに過ぎません。

 

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