ニュースリリース

IBM、量子コンピューティングの実用化に向けさらに前進 100を超える組織と連携

2020年01月31日

アンセム、デルタ航空、ゴールドマン・サックス、ウェルズ・ファーゴ、ウッドサイド・エナジー、ロスアラモス国立研究所、スタンフォード大学、ジョージア工科大学、および複数のスタートアップがグローバル量子エコシステムに新たに参画

企業、学術機関、スタートアップ、公的機関、研究機関によるIBM Q Networkのグローバル・コミュニティーが拡大、量子コンピューティングの発展を目指す

[米国ネバダ州ラスベガス - 2020年1月8日(現地時間)発/PRNewswire/]

IBM(NYSE:IBM)は本日CESにおいて、IBM Q Network™が拡大し、参加組織が100を超えたことを発表しました。その業界も、航空、自動車、銀行・金融、エネルギー、保険、素材、エレクトロニクスと多岐にわたります。今回新たに量子コンピューティングの実用的用途の探求を始める組織には、アンセム、デルタ航空、ゴールドマン・サックス、ウェルズ・ファーゴ、ウッドサイド・エナジーなどが名を連ねています。

IBM Q Networkにはこうした各業界を代表する企業のほかにも、学術機関や公的研究機関、スタートアップが多数参加。その中には、ジョージア工科大学、スタンフォード大学、ロスアラモス国立研究所、AIQTech、Beit、クオンタム・マシンズ、Tradeteq、チューリッヒ・インスツルメンツなども含まれます。

参加組織では、20万人以上のユーザーがIBM Cloudを通してIBMの量子システムや量子シミュレーターに接続し、これまでにも数千億回に上る実験を行ってきました。その結果、第三者団体による量子コンピューティングの実用的用途に関する研究論文が200本以上発表されています。

またIBMは最近、初のIBM Q System One商用汎用量子コンピューター2台を米国外に設置する計画も発表しました。設置先はそれぞれ、欧州最大の応用研究機関であるドイツのフラウンホーファー研究機構と、東京大学です。どちらも、量子コンピューティング・コミュニティーを拡大するとともに、新たな経済的機会を生み出すことを目的として、大学、産業界、公的研究機関が参加する、国をあげた研究の前進と教育体制の実現を目指すものです。

ネットワークに参加するこれらの組織には、IBMが有する量子技術に関する専門知識と開発リソースや、オープン・ソースのQiskitソフトウェアと開発ツールへのアクセス、さらにはIBM量子コンピュテーション・センターへのクラウド・ベースのアクセスが提供されます。現在同センターでは、ビジネスや科学における実用的用途の探求を目的とする商用の最先端量子コンピューターが、業界最多となる15台(うち、53量子ビット・システムが1台)稼働しています。

IBM Researchのディレクターであるダリオ・ギル(Dario Gil)は、次のように述べています。「量子コンピューティングの時代を迎えようとしている今、IBMはこの新たな技術をビジネスや社会の主要な問題の解決に利用すべく、パートナーと連携して取り組んでいます。量子コンピューティングは、気候変動に対する地球規模の闘いにおいて二酸化炭素の回収に役立つ新物質の調査や、よりエネルギー効率の高い電池を実現できる可能性のある新しい化学物質の発見といった重要な課題に大きな影響を及ぼすようになるでしょう。」

IBM Q Networkに新たに参加する企業は以下のとおりです。

  • アンセム:大手医療保険会社であるアンセムは、自社の研究・開発の取り組みを拡大し、量子コンピューティングによってコンシューマー・ヘルスケア体験をさらに向上させる方法を探ろうとしています。Q Networkには、同社の医療データの処理における専門知識を取り入れます。量子コンピューティングによって、従来のコンピューティングではアクセス不可能な大量のデータを分析すると同時に、プライバシーとセキュリティーを強化できる可能性があります。また、より正確な、パーソナライズされた治療の選択肢の開発を促進したり、健康状態の予測精度を高めたりといったさまざまな方法で、個人のより健康的な生活を実現できる可能性もあります。
  • デルタ航空:世界的な航空会社であるデルタ航空は、ノースカロライナ州立大学に設置されたIBM Q Hubに参加することに同意しました。同社は、顧客や従業員の体験を変革し、旅行中の課題を解決する上で量子コンピューティングの潜在能力を探ることを目的として、IBMとの複数年にわたる協調的取り組みに乗り出す初の航空会社となります。

 

IBM Q Networkに新たに参加する学術機関や公的研究機関は以下のとおりです。

  • ジョージア工科大学:同大学は、オークリッジ国立研究所に設置されたIBM Q Hubに参加することに同意しました。これにより、量子コンピューターの運用を容易にするためのソフトウェア・インフラストラクチャーの構築と、特別なエラー軽減手法の開発における、量子コンピューティングの基礎研究と利用を加速することを目指します。IBMの商用量子システムにアクセスできるようになることで、同大学の研究者は、既存の量子コンピューターのエラー・パターンをより深く理解できるようになるため、未来のマシンのアーキテクチャー開発に役立ちます。
  • ロスアラモス国立研究所:IBM Q Hubに参加することで、近い将来実現可能な量子アルゴリズムの開発とテストや、量子コンピューターでのエラー軽減戦略の策定といったいくつかの方向で、ロスアラモス国立研究所の研究活動が大幅に促進されることが期待されます。また、53量子ビット・システムによって、実際の量子ハードウェア上で量子シミュレーションを実行する能力のベンチマーク・テストを実施することや、おそらくは従来のコンピューティングの限界を超えることも可能になります。そしてIBM Q Networkは、ロスアラモス量子コンピューティング・サマー・スクールで革新的な研究プロジェクトを開発するめったにない機会を学生に提供する、素晴らしい教育ツールとなるでしょう。

 

IBM Q Networkに新たに参加するスタートアップは以下のとおりです。

  • AIQTECH INC:カナダのトロントに拠点を置くAiQは、AIの能力を引き出し、複雑なシステムを「学習」する機能を備えた人工知能ソフトウェアを手掛ける企業です。特に、量子コンピューティングのハードウェア、アルゴリズム、シミュレーションをリアル・タイムで特徴づけ、最適化するためのプラットフォームを提供しています。今回のIBM Q Networkへの参加は、AiQのソフトウェアのバックエンドを量子シミュレーションから量子制御へと拡張して、この分野の発展に寄与するまたとない機会となるでしょう。
  • BEIT:ポーランドのクラクフを拠点とするスタートアップであるBEITは、ハードウェアに依存せず、正式な量子ハードウェアが利用可能になりしだい対応できるソリューションの準備を進めながら、量子現象に着想を得たハードウェアをめぐる難問を解決することを専門としています。同社の目標は、問題構造を利用して、量子アルゴリズムによって従来のソリューションを超える超多項式高速化を達成することです。
  • クオンタム・マシンズ(QM):QMは、量子コンピューター向けの制御システムやオペレーティング・システムを手掛けるプロバイダーであり、その顧客には多国籍企業や学術機関、スタートアップ、国立研究機関など、この分野を代表する組織が名を連ねています。現在、IBMとQMの連携の一環として、QMのお客様に提供するためのIBMとQMの量子コンピューティング・プログラミング言語間のコンパイラを開発中です。このような開発によって、業界全体でIBMのオープン・ソース化されたプログラミング言語の普及が進むことが期待されます。
  • Tradeteq:Tradeteqは、制度化された貿易金融市場向けの初の電子商取引プラットフォームです。ロンドン、シンガポール、ベトナムにチームを置き、民間信用リスク評価やポートフォリオの最適化にAIを利用しています。世界中の主要大学と共同で次世代の機械学習モデルや最適化モデルの構築に取り組むとともに、信用、投資、ポートフォリオに関する意思決定を向上させるモデルを構築すべく量子機械学習の利用を推進しています。
  • チューリッヒ・インスツルメンツ:スイスのチューリッヒに拠点を置く試験・測定機器メーカーであるチューリッヒ・インスツルメンツは、科学の発展と量子コンピューター開発の促進を使命としています。最先端の量子コンピューター向け制御電子機器の開発を進めると同時に、現在は高度な量子アルゴリズムを量子ビットの物理的実装と結び付ける初の商用Quantum Computing Control Systemを提供しています。数量子ビットから100量子ビットまでの量子コンピューターに必要な計測をこれ1つで実行できます。今後、IBMの量子技術を同社の電子機器に組み込むことで、量子デバイスの制御と測定の信頼性を確保すると同時に、スタックの次のレベルにクリーンなソフトウェア・インターフェースを提供することを目指します。

 

IBM Q Networkの詳細と、パートナー、メンバー、およびハブの一覧については、https://www.ibm.com/quantum-computing/network/overview(US)をご覧ください。

IBM Quantumについて
IBM Quantumはビジネスおよび科学アプリケーション向けの商用汎用量子コンピューティング・システムの構築に向けた業界初のイニシアチブです。量子コンピューティングに関するIBMの取り組みの詳細は、https://www.ibm.com/quantum-computing/(US)をご覧ください。

IBM Q Network™ およびIBM Q™は、International Business Machines Corporationの商標です。

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