ニュースリリース

IBMが今後5年間で人々の生活を変える支援をする5つのイノベーションを発表

- 見えないものを可視化する新しい科学的な手段をIBMが予測 -
2017年01月 6日

TOKYO - 06 1 2017:
2017年1月6日

 

[米国ニューヨーク州ヨークタウンハイツ-- 2017年1月5日(現地時間)発]

IBMは本日、今後5年間で人々の仕事や生活、関わり合い方を変える可能性を持った5つの画期的かつ科学的なイノベーションをまとめた「IBM 5 in 5」 (#ibm5in5)を発表しました。

  • AIにより、言葉がメンタルヘルスを知るきっかけとなる
  • ハイパー・イメージングとAI が私たちにスーパー・ヒーローのビジョンをもたらす
  • マクロスコープが限りなく細部にわたり地球の複雑さを理解することを支援する
  • チップ上のメディカル・ラボが私たちの健康探偵としてナノスケール・レベルでの病気の探知を行う
  • スマート・センサーが光速レベルで環境汚染を探知

1609年、ガリレオは望遠鏡を発明し全く新しい方法で宇宙を観測しました。ガリレオは、地球や太陽系の惑星が太陽の周りを回っているという理論を証明しましたが、これはそれまで観測することが不可能なものでした。IBM Researchは、肉眼レベルからナノスケール・レベルまで私たちの世界で見えないものを可視化するようにデザインされた新しい科学的な手段 —物理的なデバイスや先進的なソフトウェアツールなど— の探求を通じてこの作業を続けています。

IBM Researchのサイエンス&ソリューションズ担当バイス・プレジデントのダリオ・ギル(Dario Gil)は次のように述べています。「科学のコミュニティーには、私たちが世界を全く新しい方法で見られるような手段を生み出すという素晴らしい伝統があります。たとえば、顕微鏡により肉眼では見えない小さいものを見ることができ、温度計によって地球の温度や人間の体温がわかるようになりました。人工知能やナノテクノロジーの進歩により、今私たちが住む世界にある複雑で目に見えないシステムを、今後5年間で見えるようにする新しい世代の科学的手段を発明することを目指しています」

この分野のイノベーションにより私たちは、農業を飛躍的に改良し、エネルギー効率を向上させ、手遅れになる前に有害な汚染を見つけ、たとえば早期の身体的、精神的な健康の衰えを防ぐことができるかもしれません。IBMの研究員で構成されるグローバル・チームは、着実にこのような発明を研究所の領域から実社会へともたらそうとしています。

IBM 5 in 5は、世界中のIBMの基礎研究所から生まれる、私たちの生活を変える可能性を持つ新しいテクノロジー、及び市場および社会の動向に基づいています。今後5年間で見えないものを可視化するあろう5つの科学的手段は次の通りです。

AIにより、言葉がメンタルヘルスを知るきっかけとなる

発達障害、精神および神経変性の疾病などの脳の病気は、人が受ける苦しみや経済的費用の観点から大きな負担となっています1。たとえば、現在、米国の成人の5人に1人がうつ病、双極性疾患、統合失調症などの精神的な健康障害を経験しており、重度の精神障害で苦しむ人々のおよそ半数は、何も治療を受けていません。全世界の精神的な健康障害のコストは、2030年までに6兆ドルにまで急増すると予想されています。(*1)

もし私たちの脳が私たちが完全に理解することができないブラック・ボックスだとしたら、会話がそれを解くカギとなるでしょう。今後5年の間に、私たちが話したり書いたことがメンタルヘルスおよび身体的な健康の指標として使われるようになるでしょう。新しいコグニティブ・システムによって解析された私たちの会話や書いたもののパターンにより、初期段階の発達障害、精神疾患および神経変性疾患の兆候が示され、これにより医師や患者がこのような状態をより早く予測、観察、経過を見ることを支援します。

IBMでは、研究員が精神医による問診の記録や録音を活用し、機械学習手法を組み合わせ、会話の中からパターンを見つけ出し、臨床医による精神病、統合失調症、躁病、うつ病の正確な予測、観察の支援をしようとしています。現在、約300語ほどでユーザーが精神病である可能性について臨床医の予測支援をすることができます。(*2)

今後、同様の手法がパーキンソン病、アルツハイマー病、ハンチントン病、PTSD(心的外傷後ストレス障害)やさらには自閉症、ADHD(注意欠陥・多動性障害)といった神経発達障害の患者の支援にも使われるようになるでしょう。コグニティブ・コンピューターは、患者の会話や書き言葉(あるいは書かれた文章)を解析し、意味、構文、イントネーションを含む言語から兆候を探すことができます。このような解析結果をウェアラブル・デバイスや画像システムなど安全なネットワーク内に収集されたデータと組み合わせることで、患者についてより詳細を把握することが可能になり、潜在している疾病を医療従事者がより効果的に特定、理解、治療できるようになります。

以前は見えなかった兆候が、患者がある精神状態にあることを示唆する明らかな兆候、あるいは治療計画がうまくいっているかの指標となることで、患者は快適な自宅にいながらにして定期的な通院に加えて毎日のアセスメントを補完することができるようになるでしょう。
(*こちらのサイトもご参照ください: http://www.research.ibm.com/5-in-5/hyperimaging/(US))

*1 https://mcgovern.mit.edu/brain-disorders/by-the-numbers (英語)
*2 Speech Graphs Provide a Quantitative Measure of Thought Disorder in Psychosis (英語) PLoS One, 2012

ハイパー・イメージングとAIが私たちにスーパー・ヒーローのビジョンをもたらす

電磁スペクトルの99.9%以上は肉眼では観測できません。過去100年にわたり、科学者たちは異なる波長でエネルギーを放射し感知する機器を作ってきました。今日、身体の医療用画像の撮影、歯の中の虫歯を見たり、空港での荷物確認、あるいは霧の中での飛行機の着陸など、このような機器のいくつかに依存しています。しかし、こうした機器は非常に専門的で高価であり、電磁スペクトルの特定の部分しか見ることができません。

今後5年の間に、ハイパー・イメージング・テクノロジーと人工知能を使った新しい画像機器によって、電磁スペクトルの周波数帯を複数組み合わせることで可視光の領域を超えて広く観察できるようになり、未知あるいは視界から隠れている貴重な洞察や潜んでいる危険を明らかにすることができるようになるでしょう。最も重要なことは、このような機器は持ち運び可能で、手頃な価格で手が届きやすいものとなるため、スーパー・ヒーローのビジョンが私たちの日常生活の体験の一部となるということです。

私たちの周りにある見えない、あるいはぼんやりと見える物理的な現象から、運転手や自動運転車は道路や交通状況がよりはっきりとわかるようになるでしょう。たとえば、ミリ波イメージング、カメラや他のセンサーを活用して、ハイパー・イメージング・テクノロジーが霧や雨の中の運転でも視界確保を支援し、薄氷のような危険で見えにくい道路の状態を検知したり、行く手にある物体までの距離や大きさを知らせてくれるようになるでしょう。コグニティブ・コンピューティング・テクノロジーはこのデータを推論し、物体がゴミ箱なのか道路を横切っている鹿なのか、あるいはパンクをもたらす道路の穴なのかを識別するでしょう。

電話に内蔵されている同様のテクノロジーを使って、食べ物の写真を撮って、その栄養価や食べても安全かどうかを示してくれるようになるでしょう。調合薬や銀行小切手のハイパー・イメージは、どれが本物でどれが偽物かを教えてくれるようになるでしょう。かつて人間の知覚で見ることができなかったものが見えてくるようになるでしょう。

今日、IBMの研究員たちは、実用的で手頃なデバイスやアプリケーションのホストとなる可能性のある、単一プラットフォーム上に電磁波スペクトラムのそれぞれの部分を横断して観測するコンパクトなハイパー・イメージング・プラットフォームの開発に取り組んでいます。
(*こちらのサイトもご参照ください: http://www.research.ibm.com/5-in-5/hyperimaging/(US))

マクロスコープが限りなく細部にわたり、地球の複雑さを理解することを支援する

今日、物理的世界は、相互接続された複雑なエコシステムのわずか一部しか見せていません。私たちはエクサバイトのデータを集めますが、ほとんどは整理されていません。実際、データ・サイエンティストが費やす時間の80%は、データが何を語ってくれるかを分析し理解するのではなくデータのクリーンナップに費やされていると推定されています。

モノのインターネット(IoT)のおかげで、冷蔵庫、電球、心拍モニターからドローン、カメラ、測候所、衛星、望遠鏡配列などのリモート・センサーにいたるまで、数百万の接続された物体から新しいデータ源のデータが溜まっていきます。すでに60億以上の接続されたデバイスから毎月数十エクサバイトのデータが生み出されており、年増加率は30%以上です。情報、商取引、社会とのかかわりのデジタル化に成功した今、世の中は物理的世界のデジタル化の過程にあります。

今後5年間で、私たちは、私たちの視野や理解の範囲内にある数十億のデバイスから集められた幅広い複雑なデータをもたらす物理的世界に関する情報整理をするために、機械学習アルゴリズムやソフトウェアを活用していくでしょう。これをマクロスコープと呼びます。とても小さなものを見る顕微鏡(マイクロスコープ)や遠くを観測する望遠鏡(テレスコープ)と異なり、マクロスコープは、ソフトウェアとアルゴリズムのシステムとして地球の複雑なデータすべてをまとめ、その意味を見出すために分析を行います。

たとえば、気候、土壌条件、水位およびそれらと灌漑(かんがい)との関係性についてのデータを集約し、整理し、解析することで、新世代の農家は、栽培に適した農作物を選択し、貴重な水資源を節約しながらどこに作物を植えて生産性を上げるかを決定する際の助けとなる洞察を得ることができます。

2012年、IBM Researchはこのコンセプトの研究をガロ・ワイナリー(Gallo Winery)で始めました。かんがい、土壌、気象データを衛星写真および他のセンサー・データと統合し、最適なぶどうの生産量や品質を生み出すために必要な特定の灌水を予測するというものです。将来、マクロスコープ・テクノロジーにより、私たちはこのコンセプトを世界のどこでも拡張することができるようになるでしょう。

地球を越えて、たとえばマクロスコープ・テクノロジーは、小惑星同士の衝突の予測や小惑星の構成についてもっと学ぶために、望遠鏡から集めたさまざまなデータ層やデータ量の複雑なインデックス作成やデータの相関を処理することができるようになるでしょう。
(*こちらのサイトもご参照ください: http://www.research.ibm.com/5-in-5/macroscopes/ (US) )

チップ上のメディカル・ラボが私たちの健康探偵としてナノスケール・レベルでの病気の探知を行う

病気の早期発見は、重要です。ほとんどの場合、病気の診断が早ければ早いほど、治りやすく症状を抑えることができます。しかし、症状が表れる前から体内に潜んでいるがんのような病気を発見することは難しいです。私たちの健康状態に関する情報は、唾液、涙、血液、尿、汗などの体液の小さな生体粒子から抽出することができます。既存の科学的な手法は、人間の髪の毛の直径よりも数千倍小さい、このような生体粒子の把握および解析について困難に直面しています。

今後5年間で、新しいメディカルlab-on-a-chip(チップ上のメディカル・ラボ〕がナノテクノロジー健康探偵として機能するようになるでしょう。体液中の目に見えない手がかりを追って、医師に診察してもらう必要があるか直ちに教えてくれるようになるでしょう。そのゴールは、本格的な生化学研究室で通常実施される病気を解析するために必要なプロセスのすべてを単体のシリコンチップのサイズに収めることです。

Lab-on-a-chipテクノロジーは、究極的には少量の体液から見つかるバイオマーカーの存在を迅速かつ定期的に計測し、その情報を各家庭からクラウドに安全に送信できるようにする便利な携帯機器に実装することを可能にするでしょう。睡眠モニターやスマート・ウォッチといったIoT機器からのリアルタイムの健康データと組み合わせ、洞察を得るためにAIシステムで解析することができるようになるでしょう。まとめると、このデータセットは私たちの健康を細部にわたって調べ、トラブルの最初のサインを警告し、病気が進行するのを防ぐ支援を行うでしょう。

IBM Researchでは、研究員たちがDNA、ウィルス、エキソソームにアクセスできる直径20ナノメーターの生体粒子に分離し、隔離することのできるlab-on-a-chipナノテクノロジーを開発しています。
(*こちらのサイトもご参照ください: http://www.research.ibm.com/5-in-5/nanotech-for-healthcare/ (US) )

スマート・センサーが光速レベルで環境汚染を探知

ほとんどの汚染物質は肉眼で見ることはできず、無視できない程の影響を及ぼすようになってその存在に気づきます。たとえばメタンは、天然ガスの基本的な成分で、一般的にはクリーンなエネルギー源と考えられています。しかし、使用される前のメタンが大気中に漏れると、大気の温度を暖めることになります。メタンは、二酸化炭素に次ぐ地球温暖化の原因と推測されています。

米国では、石油およびガス・システムからの排出が大気中のメタンガスの最大の産業発生源となっています。米国環境保護庁は、2014年に流出した天然ガス・システムからのメタンガスが900万トン以上だったと推定しています。これは、過去100年間の二酸化炭素相当として計測すると、米国のすべての鉄、鉄鋼、セメント、アルミニウムの製造工場から排出された温室効果ガスの合計よりも多くの排出量になります。

今後5年間で、天然ガスの採掘井戸の近くや倉庫施設の周り、輸送経路に沿って採用される新しい手頃なセンサー技術により、業界はリアルタイムで目に見えない漏れを正確に突き止めることができるようになるでしょう。クラウドにワイヤレスでつながっているIoTセンサーのネットワークにより広大なガス・インフラを常時監視することができ、発見するのに数週間かかっていた漏れがわずか数分で見つかり、汚染や廃棄物、そして壊滅的な事態の可能性を低減することができるようになるでしょう。

IBMの研究員たちは、Southwestern Energyのような天然ガス生産者と一緒に、インテリジェントなメタン・モニタリング・システムの開発や、 ARPA-E (米国エネルギー高等研究計画局)Methane Observation Networks with Innovative Technology to Obtain Reductions (MONITOR:メタン削減のための革新技術によるメタン観測ネットワーク)の一部としてこの問題に取り組んでいます。

IBMの研究の中心はシリコン・フォトニクスという光によってデータを転送する先進的なテクノロジーで、まさに光速での計算が可能になります。このようなチップは、地面やインフラ内、あるいは自動操縦のドローンのセンサーのネットワークに組み込まれ、リアルタイムの風量データ、衛星データ、その他の歴史的な資料と組み合わせることで洞察が生成され、汚染源や汚染量を検知する複雑な環境モデルを構築することに活用されるでしょう。
(*こちらのサイトもご参照ください: http://www.research.ibm.com/5-in-5/environmental-pollutants/ (US) )

IBM 5 in 5に関する詳細はhttp://ibm.biz/five-in-five (英語) を参照ください。

関連リンク
Flickr Set: The IBM 5 in 5 (英語)
THINK Blog: The Power of Thinking Big: IBM Research’s “5 in 5” (US)

当報道資料は、2017年1月5日(現地時間)にIBM Corporationが発表したプレスリリースの抄訳です。原文は下記URLを参照ください。
https://newsroom.ibm.com/2017-01-04-IBM-Reveals-Five-Innovations-that-will-Help-Change-our-Lives-within-Five-Years,1 (US)

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