ニュースリリース

臨床医がWatsonのコグニティブ・テクノロジーとがん治療の新たな根拠をASCO 2017において発表

- 推奨治療法に関し、Watsonと腫瘍症例検討会の結果とが、最大96%の症例で一致し、治験の被験者選択時間を78%短縮したことを研究が証明
- Watson for Oncologyに前立腺がんが追加され、年末までにがんの種類の8割の治療支援が可能となる予定
- 新たに9つの医療機関がWatsonのオファリングを導入し、Watsonの導入が世界の55の機関に拡大
2017年06月 7日

[米国マサチューセッツ州ケンブリッジ - 2017年6月1日(現地時間)発]

IBM(NYSE: IBM)とその共同研究機関は本日、ASCO(American Society of Clinical Oncology) 2017において発表するデータを公開しました。このデータにより、Memorial Sloan Ketteringによるトレーニングを受けたWatson for Oncology、およびWatson for Clinical Trial Matching(CTM)の臨床的有用性を実証します。IBMはまた、Watson for Oncologyの導入に関する最新情報として、これらが多数の病院や医療機関において現在稼動中または導入中であることを発表しました。これらの機関は、オーストラリア、バングラデシュ、ブラジル、中国、インド、韓国、メキシコ、スロバキア、スペイン、台湾、タイ、米国に及びます。また、前立腺がんの治療支援のためのWatson for Oncologyが発表されました。

今回、ASCOで以下の5つの調査結果を明らかにしました。

  • Watson for Clinical Trials Matchingにより、治験に適した患者を選択するのに要する時間を78%短縮できたことが、Highlands Oncology GroupとNovartisによる技術的な実現性調査(英語)において明らかになりました。16週間の試験中、2,620名の肺がんおよび乳がん患者のデータをCTMで処理しました。CTMは、自然言語処理の機能を利用してNovartisから提供された治験実施計画書を読み込み、計画書の選択/除外基準に対し、カルテと医師の記録からのデータを評価し、全体の94%に上る不適格な患者を自動的に除外します。これにより、治験の被験者選択時間を1時間50分から24分に短縮できました。
  • Watson for Oncologyは、推奨治療法に関して、肺がんの症例に対し96%、結腸がんに対し81%、直腸がんに対し93%の一致率を達成しました。この一致率は、インド、バンガロールのManipal Comprehensive Cancer Centreにおける研究調査で示された腫瘍委員会による推奨との比較によるものです。
  • Watson for Oncologyは、複数のタイプのがんに対する推奨治療法に関して83%の一致を達成しました。この一致率は、タイ、バンコクの総合病院であるBumrungrad International Hospitalの調査(英語)での腫瘍医による推奨との比較によるものです。
  • Watson for Oncologyは、リスクの高い結腸がんの症例に対し、73%の一致を達成しました。この一致率は、韓国、仁川のGachon University Gil Medical Centreの腫瘍委員会による推奨との比較(英語)によるものです。
  • 質的研究(英語)において、メキシコの腫瘍医は、患者のために選択肢になりうる治療法を特定するのに、Watson for Oncologyが有用であることを見出しました。特に、専門医がいない診療所や、研修中の医学生や研修医に役立ちます。

IBM Watson Healthのオンコロジーおよびゲノミクス担当副チーフ・ヘルス・オフィサーであるアンドリュー・ノードン(Andrew Norden, MD, MPH, MBA)は、次のように述べています。「このような調査は、Watsonのテクノロジーが、私たちが期待すること、すなわち、医師が自身の経験と専門知識を補強し、根拠に基づいた治療を提供できるような支援を実現していることを実証しています。このテクノロジーの導入が世界中で進むにつれ、がん治療におけるWatsonの価値を示すデータと証拠が次第に増えてきています」

本日(現地時間6月1日)、IBMは前立腺がん患者に対する総合的な治療を支援するWatson for Oncologyを発表しました。ニューヨークのMemorial Sloan Kettering Cancer CenterにおけるWatson for Oncologyの継続的なトレーニングにより、Watsonは、乳がん、肺がん、大腸がん、子宮頸がん、卵巣がん、胃がん、前立腺がんの治療を支援するように訓練され、発表されました。今年末までにこのテクノロジーは、少なくとも12種類のがん治療の支援で利用可能になり、これは世界のがん発生の8割に相当します。

Memorial Sloan Ketteringの胸部腫瘍科長(William and Joy Ruane Chair in Thoracic Oncology)を務めるマーク・G・クリス博士(Mark G. Kris, MD)は、次のように述べています。「私たちは、Watson for Oncology をトレーニングし、根拠に基づいた臨床判断をサポートするコグニティブ・ツールを世界中の医師が利用できるようにするというMSKの役割を誇りに思います。Watsonの能力と、MSKの医師が数十年にわたるがん治療の経験から収集した知識を組み合わせることで、私たちは、医師が患者それぞれの病気の微妙な特性を精査し、増え続ける腫瘍学データをより良く理解し、根拠に基づいた治療判断を行えるよう支援することができます」

Watsonの有用性を証明するデータの増加
ASCO 2017のWatsonに関するデータは、テクノロジーの進化を記録し、Watsonが治療判断をサポートできることと画期的な研究に利用できることを実証した過去の調査に基づいています。以下はその例です。

  • 2016年の調査(PDF,3.91MB,英語)では、Watson for Oncologyの推奨が、乳がんの症例の90%において、Manipal Hospitalsの集学的腫瘍委員会による治療法の推奨と一致したことが確認されました。
  • オーストラリアのVictoria Comprehensive Cancer Centerにおける2016年のASCOの調査では、Watsonの自然言語処理機能が検討されました。
  • 2015年のASCOの調査(英語)で、MSKにおける過去の患者の症例に関し、Watson for Oncology の治療法の推奨が検討されました。
  • 2014年のASCOの調査(英語)で、Watson for Oncologyが最大100%の精度でMSKトレーニング・データと一致したことが実証されました。
  • 2014年のBaylor College of Medicineの調査(英語)で、p53のがん研究において新たな研究対象とする6つのタンパク質をわずか数週間で特定するのにWatson for Drug Discoveryが役立ったことが明らかになりました。
  • 2015年の調査(英語)では、臨床医が数分で全ゲノムの遺伝子配列を分析し、すぐに治療に結びつく知見を発見するのにWatson for Genomicsが役立ったことが明らかになりました。

がん治療をサポートするWatsonの導入の拡大
本日(現地時間6月1日)、IBMはWatson for Oncologyを採用した新たな9つの医療機関を発表しました。このオファリングは、世界中の48を超える病院と医療機関ですでに利用または導入されています。インド、中国、タイ、韓国、台湾、日本、バングラデシュ、スペイン、スロバキア、ポーランド、メキシコ、ブラジル、オーストラリア、カナダ、米国の医師は、このシステムを利用または導入することにより、情報の提供を受け、意思決定をより確かなものにしています。早期に導入した医療機関の事例から、治療判断において、Watsonがどのように希望を与え、信頼性を高めるかが明らかになっています。

Watson for Oncologyの最も新しいユーザーには、オーストラリアのIcon Group、メキシコのGrupo Angeles Servicios de Salud、ブラジルのMãe de Deus、台湾のTaipei Medical University、韓国のDaegu Catholic University Medical Center、Pusan National University HospitalおよびKeimyung University Dongsan Medical Center、スロバキアおよびポーランドのSvet zdraviaが挙げられます。IBMはまた、バングラデシュ、ネパール、ブータン、東インドの病院にWatson for Oncologyを提供するためにRITES Solutionsと新たなチャネル・パートナーシップに署名しました。Systemas Genomicasは最近、Watson for Genomicsを導入し、がん研究をサポートしています。

Bumrungrad International Hospital (BIH)のSenior Director of Research & Development and Clinical DataであるNan Chen氏は次のように述べています。「Watson for Oncologyは、薬と治療が個々の患者によりパーソナライズされて行くにつれ、増大していく利用可能で膨大なデータを医師が活用することを支援する重要なテクノロジーの一例です。私たちは毎年、190以上の地域で50万人以上の患者を治療していますが、このようなテクノロジーは患者が期待する治療のレベルを提供するためにますます重要になっています。この一例がモンゴルのUB Songdo Hospitalが運営するBIHです。ここではがん治療の専門医がいない状況で一般医ががん患者の治療にあたっていますが、医師たちは高い一致率が認められた治療の選択を支援するWatson for Oncologyを自信を持って信頼することができます。」

Watson for Oncologyは、ニューヨークのMemorial Sloan Kettering Cancer Centerの腫瘍医によるトレーニングを受けた、自然言語処理を利用して患者様の構造化および非構造化データを取り込むコグニティブ・コンピューティング・システムです。このシステムは、確立されたガイドライン、医療文献、患者の症例によるトレーニングから推論し、考慮の対象となる治療の選択肢を医師に提供します。

IDC Health Insightsのリサーチ・ディレクターであるシンシア・バーガード(Cynthia Burghard)氏は、次のように述べています。「IBMなど、テクノロジー・サプライヤーの誰もがこのテクノロジーを利用できるよう発展させるにつれ、医療で人工知能が受け入れられる時期が来ています。AIの応用は、医療における主要なディスラプター(破壊者)であり、本当に価値のある医療を実現するという業界目標に近づくことができます。」

また、ASCO 2017ではIBM ResearchおよびIBM Watson Health事業の一部であるTruven Health Analyticsからデータが発表されます。

当報道資料は、2016年6月1日(現地時間)にIBM Corporationが発表したプレスリリースの抄訳です。原文は下記URLを参照ください。
https://www.ibm.com/press/us/en/pressrelease/52502.wss(US)

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