ニュースリリース
IBMとAlgorithmiq、古典的検証を超える信頼できる量子計算の枠組みを確立し、量子優位性を実証

【米国ニューヨーク州ヨークタウン・ハイツおよびイタリア・ミラノ - 2026年7月30日(現地時間)発】
Algorithmiq社とIBMは本日、量子コンピューティングの発展における重要なマイルストーンとして、不均一な量子材料のシミュレーションによる量子優位性の共同実証を発表しました。この成果は、古典コンピューターによる検証が不可能な場合でも、量子計算への信頼性を確立する新たな枠組みによって実現されたものです。
この問題と結果がQuantum Advantage Trackerの公開とともに初めて公開されてから8カ月が経過した現在も、本研究で扱われた問題領域全体にわたり信頼できる結果を生成できる古典的手法は現在まで確認されていません。このことは、量子コンピューターが最先端の古典的計算手法よりも効率的に、より低コストで、あるいはより高精度に信頼できる解を提供できることを示しており、これは長らくこの分野における重要なマイルストーンと考えられてきました。
不均一な量子物質における情報伝播の研究
触媒やバッテリー電解質を含む実際の材料は、完全な結晶構造によってではなく、不規則な構造、界面、および局所的な変動によって特徴づけられます。これらの要素は、システム内で情報、エネルギー、および粒子がどのように移動するかに大きな影響を及ぼします。こうした効果を研究するために、Algorithmiq社の創業者兼チーフ・サイエンス・オフィサーのギジェルモ・ガルシア・ペレス(Guillermo García-Pérez)が統括する研究開発部門に所属するシニア・サイエンティストであるセルゲイ・フィリッポフ(Sergey Filippov)率いるチームは、異なる局所特性を持つ領域を通じて情報が伝播する不均一な量子物質のモデルを開発しました。その結果得られたダイナミクスは、今日の量子ハードウェアで実験的に実現可能でありながら、最先端の古典シミュレーション手法にとって大きな計算負荷を伴う領域に意図的に設定されました。
このモデルをIBM Quantum Heronプロセッサー上で実行することで、微視的な結合を自在に調整および再構成できるプログラム可能な量子材料を再現しました。これにより研究者は、実際の材料と同様に、情報がどこを流れ、どこに局在し、どこで干渉するかを制御できるようになりました。
量子コンピューティングにおける信頼性の課題を解決
これまで量子計算の結果に対する信頼は、古典シミュレーションとの照合によって確保されてきました。そのためにAlgorithmiq社のソフトウェア・エンジニアリング・チームは、世界有数の古典シミュレーション研究者と協力し、さまざまなシミュレーション手法を検討しました。しかし、異なる古典的手法は同じ物理量に対して相互に矛盾する予測を示しました。厳密解が得られない状況では、古典計算を上回ることだけでなく、どの結果を信頼できるかを判断すること自体が課題となりました。
この課題に対処するため、研究チームは古典計算の能力を超える時代に向けた信頼できる量子計算の新たな枠組みを開発し、科学的発見に向けた指針を示しました。この戦略の中心となったのは、ノイズの操作とデバイスに存在するノイズの実態を反映したモデルの構築です。研究者らは、制御されたノイズ注入、ゲート校正の変更、複数のIBM Quantumプロセッサーでの実行などを通じて、量子回路に影響を与えるノイズを意図的に変化させました。その結果、量子計算の結果は安定していることが確認され、量子コンピューターが一貫性のある解を生成している証拠が得られました。また、十分に検証されたノイズ・モデルに加え、不確実性を定量化した偏りのない誤り緩和技術を用いて、結果の信頼性を独立に確認するための道筋も示しました。
ベンチマークのオープンソース化
Algorithmiq社は本日、monopropを公開します。これは分子基底状態をシミュレーションする同社最高水準の古典的手法を研究コミュニティーに提供するものであり、同社自身の主張を含む量子優位性の検証や評価に用いてきた技術と同じものです。このパッケージは、量子・古典を問わずあらゆる研究グループが、将来の量子優位性の主張を無条件に受け入れるのではなく、厳しく検証できるよう設計されています。
コメント
Algorithmiq社 共同創業者兼CEO サブリナ・マニスカルコ(Sabrina Maniscalco)氏
「量子コンピューティングのような指数関数的に発展するテクノロジーにおいて、検証され、公開の場で検証可能な優位性の実証は転換点です。それは、成長曲線が予測ではなく現実であることの証明です。量子優位性の実証は一度きりの出来事ではなく継続的なプロセスですが、私たちは今回の成果が、これまで公表した中で最も説得力のある成果であり、量子コンピューティングの進化における重要なマイルストーンとして認識されると考えています」
Algorithmiq社 共同創業者兼CTO マッテオ・ロッシ(Matteo Rossi)氏
「IBMとの協業により、リチャード・ファインマンが1982年に初めて提唱したアイデアを実現しました。同じ物理法則に基づいて構築されたデジタル量子プロセッサーを用いて量子物質をシミュレーションすることで、研究者は、古典的手法による反証を試みたい人なら誰でも利用できる、調整可能で物理学的に興味深いモデルを利用できます。このモデルは非常に難易度の高い検証対象ですが、8カ月にわたる公開検証に耐え続けています」
IBM Research ディレクター兼IBM Fellow ジェイ・ガンベッタ(Jay Gambetta)
「量子コンピューターは、量子優位性の基本要件を示せる段階に到達しました。すなわち、最先端の古典的手法を上回る性能を発揮し、かつ信頼できる結果を提供できるのです。Quantum Advantage Trackerを通じてコミュニティーによる継続的な検証が進むこと、そして量子計算手法における不確実性の厳密な評価に向けた進展を期待しています。これは、量子コンピューターが古典コンピューター単独では不可能な規模へと拡張されていく未来に向けた極めて重要なマイルストーンであり、物理学、材料科学、ライフサイエンスなどの新たな領域をさらに探求する道を開くものです」
さらなる量子優位性の実証
本日、IBMとAlgorithmiq社による今回の成果とあわせて、IBMのエコシステム全体のパートナーも、信頼できる計算に基づく量子優位性の実証を発表しています。詳細についてはIBM Researchブログ(英語)をご覧ください。
Algorithmiq社について
Algorithmiq社は、量子コンピューターを用いて世界で最も困難な課題の解決に取り組んでいます。医療から材料、AIから複雑な産業課題まで、同社は企業が現在の量子コンピューターを実用的に活用するためのソフトウェアを開発しています。イタリア・ミラノに本社を置き、フィンランド、英国およびアイルランドでも事業を展開しています。CEO兼共同創業者のサブリナ・マニスカルコ博士、CSO兼共同創業者のギジェルモ・ガルシア・ペレス(Guillermo García-Pérez)博士、CTO兼共同創業者のマッテオ・ロッシ博士、リード・リサーチャー兼共同創業者のボリス・ソコロフ(Boris Sokolov)博士が経営を率いています。これまでに4,100万ドル超を調達しており、United Ventures、機関投資家であるCDP、およびInventure VCの支援を受けています。
本資料は、2026年7月30日(現地時間)にIBM Corporationが発表したプレスリリースの抄訳をもとにしています。原文はこちらを参照ください。
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