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翻訳に埋もれる本当の課題:AIとコードをめぐる議論が本質を外し続ける理由
筆者:IBM ソフトウェア担当シニア・バイス・プレジデント 兼 チーフ・コマーシャル・オフィサー ロブ・トーマス(Rob Thomas)
筆者:IBM ソフトウェア担当シニア・バイス・プレジデント 兼 チーフ・コマーシャル・オフィサー ロブ・トーマス(Rob Thomas)
2026年2月23日(米国時間)
AI は、レガシー・コードを翻訳し、それによってモダナイゼーションの課題を解決できると主張するツールの登場とともに、COBOLに関する新たな議論を呼び起こしています。しかし、ここで重要なことは、それが「何を意味し、何を意味しないのか」を正確に理解することです。
コードを翻訳することと、プラットフォームをモダナイズすることはまったく別の話です。この二つは同じではなく、その間にある隔たりこそが、多くの企業がつまずく原因になっています。
しかし、IBMメインフレームが提供する価値は、COBOLそのものに由来するものではありません。価値の源泉は、プラットフォームそのものにあります。シリコンからOSに至るまで、トランザクションの堅牢性、セキュリティー、パフォーマンス、そして大規模処理における効率性を、他の分散環境では実現できないレベルで提供するために設計された、専用アーキテクチャーであることが理由です。
アプリケーションが COBOL、Java、あるいは他のどのような言語で書かれていても、プラットフォームが提供する保証は変わりません。価値の源泉は言語ではなく、プラットフォームそのものにあります。
そしてここに、コード翻訳という議論が不十分になる理由と、一方でそれが重要であること理由があります。
翻訳は、実際の複雑性のほとんどを捉えていません。モダナイゼーションの課題はCOBOLという言語そのものではなく、アプリケーションが稼働し、連携しているあらゆる要素に関わります。IBM Z上の Enterprise COBOLは、z/OS、CICS、IMS、Db2、RACF、MQ、Parallel Sysplex、DS8K Storageを用いたCybervaultといった、垂直統合されたスタックの中にあります。このスタックこそが、1日あたり250億件の暗号化トランザクション処理、1ミリ秒応答での1日あたり4,500億件のAI推論、最大99.999999%の可用性、耐量子暗号化、SLAに影響を与えない100% の持続的利用率などを実現しています。COBOLを翻訳しても、これらは一切変わりません。
本当に必要な作業は、データ・アーキテクチャーの再設計、ランタイムの置き換え、トランザクション処理の完全性の確保、そしてプラットフォームに組み込まれた非機能要件への対応です。これは言語の変換ではなく、システム・レベルのエンジニアリングにほかなりません。
さらに、何十年にもわたって蓄積されてきたハードウェアとソフトウェアの統合は、コードをただ移すだけでは再現できません。IBM Z上のCOBOLは、ハードウェアとソフトウェアの緊密な結合を通じて最適化されてきました。この関係は、iPhoneとiOSの関係に例えることができます。代替を作ることは可能ですが、10億台の iPhoneを置き換えられる可能性は極めて低いでしょう。性能は、ソフトウェアとハードウェアの密接な統合、プロセッサー・レベルのアクセラレーション、I/O サブシステムの最適化、そして数十年におよぶパフォーマンス・チューニングの積み重ねによって生まれるのです。
AI はメインフレームの価値を弱めるのではなく、むしろ強化します。コードのリファクタリング、DevOps のモダナイゼーション、ナレッジの継承、サービス品質の向上といった取り組みは、いずれもAIによって加速されるオンプラットフォームの取り組みです。AIはタイムラインを短縮し、経験豊富なCOBOL開発者の退職によるスキル・ギャップを埋めます。これらすべては、IBM Zをより多く活用すべき理由であり、減らすべき理由にはなりません。
SaaS だけのソリューションは、精査すると成立しません。オンプレミスへの依存の大きさを考えると、SaaSのみでメインフレーム上のCOBOLアプリケーションを置き換えてエンタープライズの要求を満たすのは困難です。さらに、デジタル主権やデータ・レジデンシーの観点から、最も重要なトランザクションを自社が管轄権を持たない地域にあるプロバイダーに委ねられるでしょうか。
この議論の一部は、そもそもメインフレームに関するものではありません。COBOLの約40%は Windows、Linuxをはじめとする分散プラットフォーム上で稼働しています。AIとCOBOLをめぐる議論の多くはメインフレームの見出しのように扱われますが、その実態は分散システムの問題です。両者の問題は性質が異なり、それらを混同すると誤った解決策に結びつきます。
COBOLを翻訳するツールは、確かに実際の課題を解決しています。ただし、それはIBM Zを利用する企業にとって最も重要な課題ではありません。多くの報道の見出しはコードに焦点を当てていますが、現場のエンジニアたちは、コードは出発点であって目的地ではないことを理解しています。アプリケーションがどのプラットフォームで動くのか、どのようにスケールするのか、どのように障害から復旧するのか、どのように暗号化されるのか、そして他の周辺コンポーネントとどう統合されるのか――これこそが本当のモダナイゼーションです。こうした違いを理解するところから、真の取り組みが始まるのです。
これは理論の話ではありません。すでに複数の企業がこれらの点を実証しています。
- Royal Bank of Canada:watsonx Code Assistant for Zを活用し、既存アプリケーションの依存関係、データフロー、構造および構成を能動的に特定し、基幹システム・アプリケーションのモダナイゼーションや変更管理のための詳細なブループリントを作成しました。詳細はこちら(LinkedIn / 英語)
- National Organization for Social Insurance(NOSI):watsonx Code Assistant for Zを使用することで、不要なCOBOLコードやプログラム的ルーチンの分析・特定にかかる時間を最大94%削減し、識別時間は約8時間から30 分程度に短縮されました。詳細はこちら
- ANZ Bank:最新のDevOpsツールを使用して手作業を60%削減し、アプリケーション・モダナイゼーションを加速しています。詳細はこちら
AI に関する議論は現実的であり、コード生成においてAIは大きな価値を生み出します。しかし、そのどちらも「翻訳」という文脈のなかで本来の意味を失ってはなりません。
当報道資料は、2026年2月23日(現地時間)にIBM Corporationが発表したブログの抄訳をもとにしています。原文はこちらをご参照ください。
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