ニュースリリース

日本、韓国、米国の4万人の学生を対象とした量子教育の推進状況について

2025年04月 8日

日本、韓国、米国に拠点を置く大学の国際的な連合は、4万人の学生を対象に将来の量子コンピューティングのキャリアに向けた教育を提供するという目標を発表してからわずか1年余りで、世界中の2,400人以上の学生を巻き込んでいます。

 

コンピューター・サイエンス教育は、かつては少数のエリート層だけがアクセスできるニッチな研究分野でしたが、今日では完全に民主化され、社会の隅々にまで浸透しています。コンピューター・サイエンス教育の歴史は、コンピューティングの次の段階である量子コンピューティングについて、グローバルに、そしてあらゆる教育レベルで教えるための有用なモデルを提供することができます。しかし、その歴史は重要な教訓も教えてくれており、今回は、この強力なテクノロジーをすべての人が利用できるようになるまでに何十年もかかることはありません。

 

2023年末、IBM、慶應義塾大学、東京大学、延世大学、ソウル国立大学、シカゴ大学は、今後10年間で4万人の学生を将来の量子人材に育成することを発表しました。1年後、この国際的な量子教育イニシアチブは、従来のコンピューター・サイエンス教育から重要な教訓を取り入れ、それらを拡張して量子コンピューティング教育の開発の規模とペースを加速することで、大きな進歩を遂げています。2024年だけでも、このイニシアチブに参画する大学では、2,400人以上の学生に量子コンピューティングの学習を提供し、2025年に向けて大きな進歩を続けています。

 

量子コンピューティングを学ぶ学生に、利用しやすく質の高い教育リソースを提供することで、私たちは協力して量子技術の広範な普及を促進し、増加する量子関連の求人とそれに対応できる人材の不足、いわゆる「スキル・ギャップ」を埋めるために協力しています。最終的には、この取り組みが世界中の教室でより技術的に包括的な環境を醸成すると信じています。

 

量子教育における大学の進歩

IBM、慶應義塾大学、東京大学、延世大学、ソウル国立大学、シカゴ大学は、4万人の学生を対象とした量子人材の育成に向けて、どのような取り組みを行っているのでしょうか。

 

この国際的な量子教育イニシアチブは、学生と教育者の双方に力を与えるように設計されたさまざまな戦略によって推進されています。これには、教育者が既存のコースに簡単に組み込める「Qiskit in Classrooms」と呼ばれるプログラミング・モジュールの作成や、教授が幅広い科学技術分野で使用できる新しいユーティリティー・スケールの量子教育カリキュラムが含まれます。また、コミュニティー主導の教育イベントや合同サマー・プログラム、地域のエコシステムにおいて将来のリーダーとなる若手研究者を育成する量子リーダーシップ・プログラムもあります。

 

現在、教育者は、ユーティリティー・スケールの量子プロセッシング・ユニットを搭載した量子コンピューターにアクセス可能であり、この科学的ツールを、新しい方法で次世代の量子計算科学者を育成するための、学期単位の、大学院レベルのコースで使用します。例えば、東京大学の学生は、2023年にNature誌の表紙に掲載されたIBM Quantumの有用性に関する実験を再現するために、キックト・イジング・モデルでユーティリティー・スケールの計算を行うことができました。

 

この新しいコースは、ユーティリティー・スケールの実験を実行するために必要な知識とスキルを学生に身に付けさせることに重点を置いており、他の機関が量子コンピューティングの最新の進歩により関連性の高い量子教育を採用するように促しています。また、IBMは、ユーティリティー・スケールの量子コンピューティングで学生を育成したいと希望する教育者の関心の高まりに応えるために、IBM Quantum Learningを通じて本コース教材をすべての人が利用できるようにしています。

 

この量子教育イニシアチブに参画している大学は、昨年のIBM Quantum Challenge(量子プログラミング・コンテスト)への学生の参加にも大きな貢献をしており、5,256人の登録者、2,383人のアクティブ・ユーザー、135,819件の提出という記録を打ち立てました。2019年に慶應義塾大学との協業のもとに初めて開始されたIBM Quantum Challengeは、学生が量子コンピューティングについて学び、Qiskitを使用したプログラミングのスキルを磨く機会を提供する、毎年恒例のグローバルなイベントです。

 

また、東京大学とソウル国立大学では、春学期のコースの一部としてIBM Quantum Challengeを取り入れ、学生が学習した内容を実証し、授業で追加の単位を取得し、量子コンピューティングのキャリアに向けた継続的な進歩を示すデジタル認定バッジを取得する機会を提供しています。

 

コンピューティングの未来に向けて、このイニシアチブが学生に提供していること

慶應義塾大学は、2018年5月にアジア太平洋地域の大学として初めてIBM Quantum Networkに参画し、同地域における主要な研究・教育拠点となっています。IBMは昨年、慶應義塾大学と共同で、ユーティリティー・スケールの量子コンピューティングに重点を置いた学部・大学院の授業において、最新バージョンのQiskitを用いた実践的な量子プログラミング・トレーニングを提供しました。慶應義塾大学には、現在、学部生向けの量子コンピューティング・コースが3つ、大学院レベのコースが1つ、研究会が1つあり、理工学部、環境情報学部の学生773名が参加しています。

 

東京大学は、川崎市に設定された量子コンピューター「IBM Quantum System One」と浅野キャンパス内のハードウェア・テストセンターに設置された量子システム・テストベッドを有し、2019年からIBMと協力して、大学院レベルの量子情報科学コースを提供しています。昨年、東京大学とIBMは、この新しいイニシアチブの一環として、大学生が量子コンピューター上にユーティリティー・スケールのアプリケーションを実装する方法を学ぶ新しい量子コンピューティング・コースを共同開発しました。東京大学では、現在、学部生向けのコースを3つ、大学院レベルのコースを1つ設置しており、200人の学生が教室でIBM Quantumシステムを使用しています。その中には、東京大学が専有利用するオンプレミスのIBM Quantum System Oneが含まれます。2024年の秋、東京大学のキャンパスで3日間のQiskit Fall Festイベントを開催し、44人の学生が地元のQiskit Advocatesから量子コンピューティングについて学び、初めて本物の量子コンピューターを実際に体験しました。

 

延世大学は、2024年に韓国初のIBM Quantum System Oneを設置し、学部および大学院レベルの研究者や学生を巻き込んで量子情報科学を推進しています。延世大学では、現在、学部生向けのコースを2つ、大学院レベルのセミナーを2つ開設しており、100人の学生がキャンパス内のIBM Quantum System Oneを利用しています。また、延世大学では、2025年9月に修士課程および博士課程の学生を対象とした量子情報学科を新設する予定です。また、「Qiskit in Classrooms」プログラミング・モジュールを春学期と秋学期の量子情報科学の学部課程に組み込んでいます。延世大学は、昨年11月に独自のQiskit Fall Festイベントも開催しました。このイベントは2週間にわたって開催され、合計12のセッションが行われ、140人以上の学生が参加しました。

 

ソウル国立大学は現在、Qiskitを活用したコンピューター・サイエンスおよびエンジニアリング学部の量子コンピューティングおよび量子情報科学コースを提供し、非常に成功しています。講義は同大学のYouTubeチャンネルで視聴可能であり、最新の量子コンピューティング・コースは3,800回以上再生されています。また、この学部では、春学期コースの一部としてIBM Quantum Challengeを組み込んでおり、学生が個人またはグループとして問題に取り組む機会を提供しています。これにより、学生は自分のスキルをテストし、学んだことを実証し、量子コンピューティングのキャリアに向けた継続的に進歩していることを示すデジタル認定バッジを取得できます。2025年春学期から、物理・天文学科は、「Qiskit in Classrooms」を利用した初の学部向け量子コンピューティング・コースを開始しました。

 

シカゴ大学は、長年にわたり量子エコシステムの構築に向けた取り組みの最前線に立ち、シカゴ地域での強力な人材育成イニシアチブを推進してきました。2023-24年度には、プリツカー分子工学部、物理学、数学、コンピューター・サイエンス、化学の各学部にまたがる21人の教員による、量子に焦点を当てた29のコースを提供しました。さらに、この夏、シカゴ大学とIBMは、同校の学生向けを対象とした共同プロジェクトベースの体験であるSummer Metcalf Clinicを開催しました。このプロジェクトでは、学部生のチームがIBM Quantumチームのメンバーと協力して、インタラクティブなエンターテインメントを通じて量子コンピューティング教育の分野を深く掘り下げました。参加した学生たちは、ビデオゲーム「Minecraft」を通じて量子力学の基礎を教えるための概念実証に成功し、難しいトピックを幅広い視聴者に伝える方法を学びました。

 

量子コンピューター・サイエンス:未来への加速

量子コンピューティング教育の進化は、多くの点で、古典コンピューティングの黎明期を反映しています。どちらの分野でも、当初はアクセスがエリート教育機関に限定されていました。しかし、時間の経過とともに、テクノロジーとアクセシビリティーの進歩により、参入障壁が大幅に低下しました。

 

古典コンピューティングでは、このプロセスに数十年を要しました。量子コンピューティングでは、それをわずか数年に短縮しました。オープン教育の原則、Qiskit SDKのようなオープンソース・ツール、コミュニティー主導のイニシアチブを活用することで、今日の大学は、世界中の何百万人もの学習者が量子コンピューティングに取り組むことができます。

 

このブログ記事で紹介したような量子教育イニシアチブの成功は、量子コンピューティングの採用を加速させる上で、教育機関とテクノロジー・プロバイダーが協力することの重要性を強調しています。この取り組みは、次世代の量子学習者を育成する上で重要な役割を果たします。

 

IBM Quantum Learningを今すぐ始めよう

量子コンピューターの使い方を学び始めるのに、大学生である必要はありません。IBM Quantum Learningでは、量子情報科学に関する初心者向けのコースや、特定のユースケースに関する実践的なチュートリアルなど、必要なものがすべて無料で利用できます。

 

例えば、IBM Quantumが東京大学と共同で開発した14のレッスンとラボを含む「Utility Scale Quantum Computing Course」を利用できます。最近まで、このコンテンツはIBM Quantum Networkのメンバーのみが利用できましたが、このたび一般公開されました。これにより、関心のある学生、教育者、開発者、研究者は、このコースを使用して、今日の量子ハードウェアで計算を効果的にスケーリングする方法を学ぶことができます。

 

IBM Quantum Learningの新しいコンテンツの詳細については、最近のコースの更新と新しいラーニング・パスについて詳しく説明したブログ(英語)をご覧ください。

 

 

当報道資料は、2025年3月27日(現地時間)にIBM Corporationが発表したブログの抄訳をもとにしています。原文はこちらをご参照ください。

 

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